先制パンチを浴びせた。楽天涌井秀章投手(34)が今季初対戦のオリックス打線を7回5安打2失点に抑え、開幕2連勝を挙げた。

力強い直球を軸に丁寧にコースをつき、無四死球9奪三振。昨季11勝で史上初の3球団での最多勝を獲得も、チームとしても2年連続で勝ち越しを逃すオリックスには4戦0勝1敗。難敵から19年5月1日以来8試合、2年ぶりの白星を挙げ、カード初戦をものにした。

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脳裏には、はっきりと「0」が浮かんでいた。涌井は昨季、オリックスと4戦し0勝1敗、防御率5・24。ロッテから4勝、ソフトバンクから3勝、西武、日本ハムから2勝ずつを挙げる中、唯一白星がなかった。「去年1回も勝ってないということも含めて集中していた」。チームも一昨季は五分、昨季は2つ負け越し。石井GM兼監督も「年度が替われば違う」としながら「相手チームとの公式戦のファーストコンタクトは大事」と“1発目”の意味を強調していた。

だからこそ、右腕はゾーンで攻めた。「真っすぐに正直手応えは今日は感じてない」としながら、100球中47球を占め、9三振中6三振の決め球に用いた140キロ台中盤の直球は威力十分。「手応えがあった」と話すカーブで緩急をつけた。昨季同様、直球とカーブの中間速にあたる130キロ台前半の“こやシン”こと高速シンカーの存在感も増した。

6回を終え85球で2安打無失点。「いいペースで行けていた」と完封、完投も見えてきたが、3点リードの7回。先頭吉田正に右翼線二塁打、続くモヤに右中間適時二塁打を許した。「先頭に長打はダメだなというのが反省。吉田とモヤの前にランナーがいないとこういう僅差のいい試合になる」。さらに1点を与えたが、1死一塁から伏見を投ゴロ併殺に打ち取り、リードを守った。前日は5投手で11四死球を許し16失点の大敗。「昨日とかもフォアボールで自分たちでピンチを広げている。フォアボールがないといい試合になるんだというのを若手とかも見ていて分かったと思う」と抜群の制球力を発揮し、貫禄の無四死球投球。結果で手本を示した。

開幕戦に続き、2連勝。チームも開幕3カード続けて初戦をとり、主導権を握り続ける。17年目の右腕は「自分も割とベテランになってきて、まだそこでもカード頭で投げられるというのが見えてきてる。(今日も)フォームを探り探り投げていた。まだもうちょっと球の手応えも出てくると思う。もう少し時間がかかるかもしれないですけど、自分でも楽しみだと思います」。2段、3段、4段…。経験から培ったギアを長丁場に合わせて上げ続け、頂点を目指す。【桑原幹久】

▽楽天石井GM兼監督(涌井に) 開幕戦よりも精度が高くて、しっかりとしたクオリティーをもって投球してくれた。涌井を信じられる内容だった。本人の中では、まだもうひとつ段階がある感覚のようで、頼もしい感じはあります。