開幕前から注目した広島栗林が、ルーキーながら、抑えで結果を残している。縦変化のフォークが良く、リーグトップタイの5セーブを挙げ、現状では広島の不安要素を解消する働き。抑えてる時は余計なことは考えず、どんどん投げていけばいい。

抑え投手で大事な要素は(1)狙って三振が取れる、(2)四球を出さない、(3)ウイニングショットがあるの3点である。精神的なタフさも必要で、開幕当初は中川が務めた巨人は特に、マスコミとの戦いもあるので、メンタルの強さがなければ務まらないだろう。

3つの要素を持つ栗林だが、怖さを知った時にどういけるか。私もやられた時は切り替えが難しかったし、次の日に球場に行くのが嫌だった。人それぞれの切り替え法があるが、私はマウンドに上がれば自分の投球に集中できた。だから、やられた試合の後は早く投げたかった。

数年前、楽天の松井と1イニングの理想の投球について話したことがある。彼は「3者連続三振」と答えたが、私は「3球で3アウト」が理想だった。抑えは次の日も試合があるので、いかに余分なボールを使わないかが大事。2ストライクになれば、1球で三振を取ることを意識した。

発想の転換で、投球も楽になる。当然、見逃しや空振りでストライクを取れれば確実なのだが、ファウルでもカウントを稼げる。「バットに当てられても、フェアゾーンに飛ばされなければOK」と考えれば、ピッチングが窮屈にならず、思い切って攻められる。

今の栗林を見る限り、フォークの他にも、カーブやカットボールなど球種が豊富。私の経験では、投げていく中で球種は絞られてくるだろう。僅差の展開では自信のあるボールを打たれれば割り切れるが、それ以外のボールを打たれれば悔いが残る。私の場合は速球とフォークが軸で、点差が開いた時はカーブも投げていたが、1点差の場面ではほとんど投げなかった。

栗林にとって、抑えの経験がある佐々岡監督の存在は大きいだろう。怖さを知っているし、つらさをわかってくれているので、的確なアドバイスももらえる。抑えは先発、チームの勝利を背負って最後を締める。やりがいがある分、プレッシャーも多かった。自分流を突き詰めていけば、非常に面白いポジションである。(日刊スポーツ評論家)

<12球団クローザーメモ>

広島栗林 球団では03年永川以来となる新人として守護神に抜てきされた。公式戦7試合だけでなく、練習試合3試合、オープン戦4試合無失点。

阪神スアレス 昨季セーブ王。昨季ホーム試合30試合の防御率は0・88。最速161キロの剛球が今年もうなる。物静かでシャイで愛されキャラ。

巨人中川 スライダーを武器に展開不問で安定した投球ができる左腕。昨季守護神デラロサとともに原監督から「2人の守護神」と信頼される。

中日R・マルティネス 来日遅れも2軍2試合2回無失点で13日から合流予定。祖父江、福の最優秀中継ぎコンビと勝利の方程式を再構築する。

ヤクルト石山 金足農(秋田)時代に投手転向。打撃投手で真剣勝負し、打者を抑える喜びに目覚めた。キレある直球とフォークを武器に抑える。

DeNA三嶋 運動神経が抜群。小学校時代はサッカーをプレー。チーム有数の快足で、身のこなしが軽さが好フィールディングを生む。

楽天松井 左利きながら小学時代は二塁を守る器用さも。田中将から教わった高め速球で投球の幅を広げ、最年少での通算150セーブを狙う。

ソフトバンク森 入団から7年連続で50試合登板の鉄腕。たとえ失点しても逆転は許さない。僅差のリードでこそ本領発揮する精神面の強さも。

西武増田 無敗で最多セーブ投手を獲得した昨オフ、4年契約で生涯西武宣言。子煩悩で愛妻家の守護神は、家でもブルペンでも不動の大黒柱。

ロッテ益田 シュートの握りで投げる直球は、浮き上がる軌道で空振りやファウルを取れる。荻野と並ぶ俊足を誇り、調整でもとにかく走る。

オリックス漆原 19年にウエスタン・リーグ最多セーブをマーク。支配下登録された昨年は史上初の初登板初セーブ。力強い直球が持ち味。

日本ハム杉浦 ダルビッシュ(パドレス)がツイッターで「すごい球」と驚いた150キロ台の快速球が魅力。先発から転向1年目で難なくフィット。