日本生命セ・パ交流戦は、明日25日に開幕する。リーグが異なる球団、選手の対戦が注目されるのはもちろん、ペナントレースの行方も左右する重要な期間となる。2005年(平17)に誕生した交流戦は一昨年までに15回を数えた。昨年はコロナ禍で中止になっただけに、2年ぶりの開催を心待ちするファンは多い。野球取材歴約30年のベテラン、小島信行記者(52)が見どころを紹介する。

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「交流戦がペナントを左右する」と言われる説を実証するデータがある。リーグ1位だったチームが交流戦で順位を下げた場合、そこから逆転優勝した例はない。また、交流戦で順位を下げながら優勝したのは06年の日本ハムだけ。この時も3位から4位に下がったに過ぎない。つまり、セ、パともに、交流戦で順位が下がると、ペナント制覇が厳しくなると言っていい。

リーグごとにみると「強すぎるパ」と「弱すぎるセ」がよく分かる。ここもペナントの行方を大きく左右する要因と言える。

過去15回の交流戦は、パが1098勝、セが966勝、引き分けが60。パが132勝ち越している。平均すれば1年で9勝しか差がないので「思ったよりセは善戦しているじゃないか」と感じる人がいるかもしれない。だが、実際の実力差はもっと開いている。

各チーム36試合制だった05、06年はともにパが1つ勝ち越しただけ。しかし、18試合制になった15年以降は年平均で11・6勝の差がついている。試合数を合わせれば23・2勝差と、格差は大幅に広がっている。この間、セが勝ち越したのは70勝67敗7分けの09年だけと、悲惨な状況にある。

この格差がどうペナントに影響してくるか? パは交流戦で大きく勝ち越しても油断は禁物。セは交流戦で勝ち越せば大きく優勝に近づくと言っていい。

パでは、過去6チームが交流戦で勝ち越したにもかかわらずリーグ最下位に沈んだ。交流戦で借金をしたチームが優勝したのは2チームで、06年の日本ハムが借金2の7位、08年の西武が借金4の11位から巻き返している。08年ソフトバンクは交流戦で優勝しながらリーグ戦は最下位。19年オリックスも交流戦2位ながら最下位に沈んでいる。そして特にパが圧倒し始めた10年以降、交流戦で負け越してリーグ優勝したチームはない。つまり交流戦で勝ってもリーグ戦で有利とは言えないが、もちろん負けすぎれば逆転は不可能になっている。

一方、セは勝ち越したチームが優位に立つ。交流戦で負け越さなかったチームは、1度も最下位に沈んでいない。それどころか10年中日、15年ヤクルト、18年広島と、3チームが交流戦で負け越しながらリーグ優勝を果たしている。セの各球団とも交流戦に苦しんでいるため、たとえ負け越してもリーグ優勝のチャンスがあることを証明している。パが圧倒し始めた10年以降、この傾向が顕著と言っていいだろう。

さて、昨年は新型コロナウイルスの余波で交流戦が実施されなかった。2年ぶりの交流戦は注目点も多い。まず開幕から好スタートを切って2位につける楽天は交流戦の戦いが大きなカギを握ってくるだろう。僅差で首位に立つソフトバンクは、交流戦通算214勝126敗14分け、勝率6割2分9厘と12球団で最高を誇る。交流戦で順位を下げると、先述したデータではリーグ優勝が厳しくなってしまう。

これはセも同じで、1位阪神を追いかける2位巨人はリーグで唯一、交流戦の通算勝率が5割を超えている(5割2分5厘)。阪神は08年に最大13ゲーム差をつけながら、巨人にセ・リーグ記録となる大逆転優勝をされている。開幕からいい戦いをしているだけに、交流戦でさらに首位を固めておきたいところだ。

普段のペナントでは見られない選手の対決が、交流戦の最大の魅力である。これらに加え、ペナントレースの行方を見据えながら見ていくと、楽しみは増すのではないか。楽しみの多い、注目の交流戦がいよいよ始まる。