レジェンドはやはり、甲子園球場に愛された。

2年ぶりに開催された「日本生命セ・パ交流戦」で、2年前は阪神の顔だったロッテ鳥谷敬内野手(39)がひと振りで輝いた。

603日ぶりの聖地で、7回に代打で登場。大勢の虎党からも応援される中、見事な適時打で今季初打点を挙げた。勢いに乗ったチームは、8回にレオネス・マーティン外野手(33)が逆転15号2ラン。鳥谷がセ首位に立つ古巣撃破への道しるべになった。

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鳥谷が甲子園でヒットを打った。二塁走者が生還し、万雷の拍手が鳴る。野球ファンが見慣れた光景はしかし、阪神の歓喜の時ではなかった。「打った後は久しぶりにこの声援の中で、というのを感じました」。黒いユニホーム、赤の打撃用手袋。ロッテ鳥谷として甲子園で勝利に貢献し、懐かしい感覚を思い出した。

603日ぶりに黒土を踏んだ。7回、三塁側ベンチを出て代打準備を始めても、最初は誰も気付かない。徐々に球場の空気が変わり、懐かしいシルエットに気付く。「代打鳥谷」のアナウンスで銀傘に約80デシベルの拍手が響いた。「向こうにしてみればピンチの場面なので、そこで声援を送ってもらうというのもなかなかないですし、そういう意味では結果として応えられて良かったです」と温かさへの感謝を口にした。

公式戦923試合をホームで過ごし、924試合目にして初のビジター甲子園だ。「お客さんが入ってる中で練習することもないですし、ビジターのロッカーの広さとかも感じることできないので。練習の時間帯も全然違うので、いい経験になったと思います」と三塁側からの景色を味わった。練習中にはファンが手に持つ背番号1のユニホームやタオルが、たくさん目に飛び込んできた。

ひと振りで1点差に迫ると、8回にマーティンの逆転弾が浜風に負けじと夜空へ飛んでいった。「最終的にはチームが勝てるのが一番なので」と喜びに浸る。交流戦での安打332本は歴代1位。6月には40歳になるがまだまだ衰えない。役割も分かっている。

「交流戦でDHがない試合が多いので、代打の重要性というのは特に、試合の中ではDHでやっている時よりも出てくるので、そこの役割をしっかり果たせたらなと思います」。

フォア・ザ・チームに徹しながら、主役のような結果がついてくる。鳥谷敬のひたむきさと華やかさから、若手たちも多くを吸収する。交流戦の初戦、ロッテに大きな勢いがついた。【金子真仁】

 

▼ロッテ鳥谷は交流戦が始まった05年以降、新型コロナウイルスの影響で中止となった昨年を除き、全16シーズン出場となった。交流戦初年度から出場シーズンを継続しているのは、この日出場したヤクルト内川のほか、ヤクルト石川、楽天涌井、西武栗山がいる。

▼鳥谷が安打を放ち、交流戦通算最多安打を332本とした。通算最多試合は339試合目。

▼鳥谷の甲子園での安打、打点とも、19年9月22日DeNA戦、5回に代打で左前適時打を放って以来611日ぶり。甲子園では通算846安打目となった。

▼鳥谷は西勇とは、昨年まで通算12打数1安打、打率0割8分3厘。苦手投手に痛打を浴びせ、古巣に恩返しした。

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