5連勝に導くキラ星になった。ロッテのドラフト4位・河村説人投手(24=星槎道都大)が7月7日に77球を投げて、5回1失点でプロ初白星。192センチの大型右腕は、織り姫とひこ星のように、ロッテと強く結ばれる運命だった。

北海道沿岸のむかわ町で育ち、高校は内陸の芽室町にある白樺学園へ進んだ。「すごく自主性のある高校だったので、自分で取り組むというテーマで成長できたかなと思います」。北海道の中でも雪が多く、寒さの厳しいエリア。十勝の大地で鍛え上げ、3年夏に甲子園の土を踏みしめた。

芽室町の手島旭町長(54)が振り返る。「当時、まだ町長になる前ですが、白樺学園のPTA会長をしていまして。娘が河村君と同学年で」。ドラフト直後、さらにたくましくなった大学生の河村が芽室町役場に表敬訪問に訪れた。手島町長はその席で、驚きの事実を明かした。

「実は私も高校時代に野球部で。当時のマネジャーが今、ロッテでウグイス嬢をしているんですよ。彼女のアナウンスで名前を呼ばれて、1軍で活躍できるように頑張って!」

その人こそ、今年でアナウンス歴31年の球団職員・谷保恵美さん。帯広三条高の野球部では手島町長が主将で、谷保さんが同学年のマネジャーの1人だった。3年夏、旭川スタルヒン球場で甲子園の夢が破れた試合も、谷保さんは記録員でベンチ入り。「彼女は本当に野球が好きで。野球への思い入れは男子部員を入れても一番でした」。

20歳の頃、12球団の事務所に片っ端から電話し、プロ野球のアナウンス職を求めた谷保さん。都内の大学に進むも自主練習の多い環境を強く求め、19歳で地元大学からプロを目指し直した河村。世代は違えども、自分の力で道を切り開いた2人が、故郷から800キロ以上離れた千葉で運命的に巡り合った。同じ球場にいるのにコロナ禍で会話もままならない状況ながら、谷保さんはこの不思議な縁を喜んでいる。コールはいつものように、もちろん他の選手へと同じように温かかった。「マリーンズのピッチャー、河村説人~」。

十勝の青空のように伸び伸びとした声に送り出され、仲間に支えられながら星をつかんだ。「しっかり、チームの中心になれるような投手になれるように、頑張っていきたいです」。そう胸を張って誓えた夜。幕張では天の川は見えないけれど、忘れられない7月7日になった。【金子真仁】

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