首位阪神が最下位広島に連敗した。チームは4番大山を先発から外し、3番ロハス、4番サンズなど打線改造を敢行。ただ先制した直後の1回に逆転されると、ひっくり返す力はなかった。5番佐藤輝は3度の得点機で打てず、24打席連続無安打と自己ワーストを更新。2位巨人と3位ヤクルトが引き分け、引き離すチャンスでつまずき、29日は結果次第で3位転落もあるピンチを迎えた。

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「佐藤に代わり代打原口」-。球場に響くアナウンスが耳に入ってくる。佐藤輝はただただ、グラウンドを見つめるしかなかった。今季98試合目。プロで初めて代打を送られた。8回。サンズの適時内野安打で1点差に迫り、なお2死一塁。勝負手は実らず、原口は力なく投ゴロに倒れた。

「昨日ももう1本っていう感じだったけど、今日も良いところまでいった。良い当たりが正面にいったりっていうところでは、バッター陣はよく粘ってくれた。打線的には輝と悠輔が悪いっていうのはあるけど、他はそういう感じはあまりないんで」

矢野監督が振り返るように、断を下した打線は確かに上向いた。後半戦打率1割台の4番大山が、5月2日広島戦以来のスタメン落ち。代わって、それまで3番のサンズが4番に入った。好調ロハスは6番から7月3日広島戦以来の3番に昇格。6番には、4試合代打での出場が続いた糸原を今季初めて三塁でスタメンに配した。ロハスは初回の先制適時打を含むマルチ安打。糸原も同じく2安打で起用に応えた。広島を上回る12安打で6得点。つながりを取り戻しつつある。

ただ、変化のあったオーダーの中で不動だった5番佐藤輝が、「線」をぷつりと断ち切ってしまった。3度も得点圏に走者を置いて打席を迎えたが、いずれも凡退。1点差に迫った6回2死一、二塁ではケムナの内角直球を見逃し三振。6試合、自己ワーストをさらに更新する24打席連続ノーヒット。試合前のフリー打撃ではサンズから身ぶり手ぶりを交えてアドバイスを受けていたが、結果につながらなかった。ドラ1ルーキーが、かつてない長いトンネルをさまよっている。

矢野監督 そりゃいろんなことあるやろね、1年目やし。まだまだこれからの選手なんで、それをどうするかしかない。

2位巨人とは1・5差。3位ヤクルトには2差に迫られた。仮に29日に阪神が敗れ、両チームが勝てば一気に3位転落の可能性がある。正念場が続く中、不振を極める佐藤輝の起用について、指揮官は「明日考える」とだけ言葉を残した。今季14度目の「陥落危機」。若手もベテランも一丸となって防ぐしかない。【中野椋】

 

▼阪神が広島に敗れ、2位巨人、3位ヤクルトが引き分けたため、それぞれとのゲーム差が1・5、2となった。ゲーム差はあるが、阪神は29日に首位から一気に3位まで転落する可能性がある。巨人が同日の中日戦に勝つと勝率5割7分5厘、ヤクルトもDeNA戦に勝つと同5割7分3厘1毛、阪神が広島戦に敗れると同5割7分2厘9毛となって2チームが上回る。巨人は2位阪神とゲーム差マイナス0・5で首位、ヤクルトは同1で2位になる。