阪神梅野隆太郎捕手(30)が苦手の巨人先発高橋を攻略し、打線を勇気づけた。1点を追う5回1死一塁。ボール先行でカウントを取りに来た真っすぐを見逃さなかった。173センチの体を目いっぱい使ってフルスイング。「打った瞬間『入ったな』と思った」。打球伸びるにつれて歓声が大きくなる。大きな弧を描き、メガホンが揺れる左翼席に着弾。会心の「U2ポーズ」で喜びを爆発させた。

梅野 接戦をどう取っていくかというのは、自分たちの永遠のテーマ。バチバチ意識していかないといけない。ジャイアンツから流れを持ってこれたのはよかった。

チームの今季100本塁打目となる3号は、7月1日のヤクルト戦(甲子園)以来、約2カ月ぶりのアーチ。何より、今季4戦4敗の天敵左腕、高橋から打ったことに価値がある。高橋からは今季の甲子園24イニング目で初めての得点。東京五輪では「侍JAPAN」の縦じまで金メダルを首にかけてから1カ月。「Tigers」の縦じまで初めて「虎メダル」を掛けられ、笑顔がはじけた。

1発に沸いたのは甲子園だけではない。遠く離れた福岡で応援する父義隆さん(56)も会心だっただろう。阪神戦のナイターがある日は、試合開始時間までに仕事を終わらせ、お風呂に入って、ビールを片手にスタンバイしているという。勝利に貢献した1発に、祝杯をあげたに違いない。

試合を決めた大山の劇的サヨナラ弾には、ベンチからヘルメットをかぶったまま飛び出し、跳びはねて喜んだ。「また明日は0-0からから始まる。チームもワンチャンスをものにできるように、週の最後を全員野球でやっていきたい」。少年のように喜んでいた数分後。早くも巨人との第3ラウンドに向け引き締める姿があった。【前山慎治】