勝利が決まると、JR東日本・山田龍聖投手(21=高岡商)はマウンドに駆け寄ってきた捕手渡辺と抱き合った。「最後に勝てて良かったです。ホッとした気持ちでいっぱいです」。東京ドーム最後のきっぷを手に入れ、力が抜けたような表情で話した。

絶対に投げるつもりだった。前夜のセガサミーとの第3代表決定戦は、5時間を超える延長18回の熱戦だった。山田は同点の9回に登板。そのまま抑え続けたが、18回1死から勝ち越され、敗れた。くしくも、ドラフト会議と同じ時間帯。試合中、浜岡監督から巨人2位指名を受けたことを聞いた。

プロ入りがかなうも、都市対抗出場は決められず「うれしかったり、悔しかったり、いろんな感情がありました」。試合終了は夜の11時を過ぎていた。複雑な気持ちを抱えながら寝たのは、この日の午前3時。疲れは残っていたが「今日が終われば間隔があく」と臨んだ。

浜岡監督も同じ気持ちだった。目を赤くして言った。「今年は山田が急成長しました。都市対抗で優勝するには、山田が跳ねないと厳しい。最後は山田と決めていました」。厳しい場面を経験させることで、もう一段階、ステージが上がることを期待。投入は、8回に2点リードから1点差に詰め寄られ、なお無死三塁の場面だった。山田は最初の打者に同点犠飛は許すも、後を絶った。そのまま続投し、0を重ねる。延長10回に味方打線が1点勝ち越し。その裏を3人で抑え、12年連続24度目の都市対抗出場を決めた。

東京ドームは、プロで本拠地となる場所。その前に、社会人の集大成となる投球を見せる。「JRで投げる最後の大会。チームの目標である日本一になりたいです」と力強く宣言した。【古川真弥】