広島鈴木誠也外野手(27)がポスティングシステムを利用して米大リーグに挑戦することが16日、決まった。この日、鈴木清明球団本部長と会談。希望を伝え、了承された。15年から目標としていた大舞台への扉を開き、本人も喜びと決意を口にした。来週にも日本野球機構(NPB)へ申請手続きする。

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新たなステージへの扉をノックした鈴木誠は、最後まで“夢”という表現は使わなかった。かねて希望していた米大リーグ挑戦を広島球団から容認され、来週にもNPBへ申請手続きする。「常にうまくなりたいと思うのが、もちろん普通だと思いますし、そういう気持ちで今まで野球に取り組んできた。もっと上で頑張りたい、もっと上手になりたいという気持ちがより強くなってきたので、挑戦したいという気持ちになりました」。野球人として高みを目指す上で、海を渡る決断もまた、ひとつの通過点。米大リーグ挑戦は“夢”ではなく、“勝負”と表現した。

「もっと上の世界で勝負したい。やっぱり世界のいろんな選手がいる中で、やってみたい。そうしたら、もう少し自分の考え方が変わるんじゃないかなと。もっともっとスケールの大きい選手になるためには、挑戦できるならしっかり勝負していきたい」

米球界に憧れはない。きっかけをくれたのは、15年にヤンキースから広島に復帰した黒田博樹氏。鈴木誠より3学年上のマイク・トラウト(エンゼルス)の映像を見せられた。「同じ野球をやっているのに、こんだけ違うんだって衝撃を受けた。こういう選手にも勝ちたいという思いが強くなった」。あの日から、米大リーグはひとつの目標となった。

周囲を納得させる結果を残してきた。16年から6年連続で打率3割、25本塁打、75打点をクリア。「成績的にも球団が認めてくれたというのもある。行くためには、そのぐらいの成績を出さないといけないと思っていた。だから是が非でも結果を出してという感じではやっていました」。侍ジャパンの4番も務め、東京五輪では金メダルも獲得した。

あの日定めた目標に突き進み、ポスティングでの米大リーグ挑戦にたどり着いた。ただ、夢を追って広島を離れるのではなく、戦うために海を渡る。この日、見せた笑顔はポスティングが認められたからではなく、世界各国の猛者たちが待ち受ける舞台への挑戦権を得た高揚感から出たものに感じられた。【前原淳】

◆鈴木誠也(すずき・せいや)1994年(平6)8月18日、東京都生まれ。二松学舎大付時代は投手兼内野手で高校通算43本塁打。甲子園出場なし。12年ドラフト2位で広島入団。16~21年に6年連続で打率3割、25本塁打以上。19、21年に首位打者と最高出塁率。ベストナイン5度、ゴールデングラブ賞4度。17年WBC、19年プレミア12、21年東京五輪で日本代表。プレミア12と東京五輪は4番打者で出場し優勝。181センチ、98キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸3億1000万円。妻は元新体操選手のタレント畠山愛理。

〇…球団は鈴木誠の貢献度を認め、米大リーグ挑戦を後押しした。リーグ3連覇に貢献した後も、4番として好結果を残し続けた。チーム内でも若手時代のムードメーカーから頼れる兄貴分へと成長し、今季は野手主将も務めた。交渉した鈴木球団本部長は「行きたいのであれば、チームに貢献してほしいというのはずっと言っていました。彼はそれに応えてきたと思うから、タイミング的にもいいのではないかと思った」と認める。

▽広島佐々岡監督 監督の立場としては複雑ですが、メジャーで活躍を見るのも楽しみ。挑戦することが決まったので、移籍する球団が決まれば応援したいと思います。

▽広島松田球団オーナー 向上心の高い自覚ある選手。素晴らしい貢献をしてくれた。残念と言ったらおかしいけど、行かせてあげたい気持ちもある。走攻守で活躍できる。行く以上は頑張ってほしい。野手では初めてだけど、広島印は優良だと示してくれるとうれしい。