背番号3桁から1歩ずつはい上がる。ソフトバンク育成8位指名の田村(福島)・佐久間拓斗捕手(3年)が“甲斐ロード”を突き進む。

憧れは、同じ育成出身で、球界を代表する扇の要となった甲斐拓也捕手(29)。目で見て、耳で聞き、プロで生き抜くすべを学ぶ。187センチ、104キロと高校生離れした体格で高校通算本塁打は35本。公立の星としてプロの世界へ羽ばたく。

   ◇   ◇   ◇

ドラフト会議から約1カ月がたち、若鷹の一員となる佐久間は期待を胸に抱いてプロの世界へ飛び込む。

「時がたっていくうちに、プロ野球選手になるんだという、実感が湧いてきた。育成からのスタートですが1歩1歩を見つめながら支配下登録され、最終的には1軍で活躍したい」

挫折を何度か経験してもマスクをかぶり続けた。野球を始めた小学2年から捕手一筋。高2の秋から正捕手に定着したが順風満帆とはいかなかった。

「自分の配球ミスで負けた試合が何試合もあった。(捕手が)いやになったこともありました」

そんな佐久間に大友研也監督(45)は、「(佐久間が)捕手と4番でやっていくしかないだろ!」とゲキを飛ばした。背番号2はその言葉に奮い立った。プロ野球をYouTubeで何度も見返し、野村克也氏の著書「野村ノート」を読み込むなど、課題の“配球”と向き合った。「大友先生の下でやっていなかったら今の自分はいない。人間力の部分でも大きく成長することができた」。ひたむきに努力を続けた成果が実を結び、指揮官にとって初のプロ野球選手誕生となった。

チームメートとなる甲斐が憧れの存在。「中学の時から甲斐選手を目標にしています。投手を引っ張って、送球もすごい。どうすれば体のスピードとキレを出せるのかを聞いてみたい」と目を輝かせ、貪欲に技術を吸収していくつもりだ。本塁から二塁への送球タイムは1・70秒。甲斐選手の“甲斐キャノン”ばりの強肩を持ち、本家同様、育成から成り上がっていく。

打撃も高い潜在能力を秘める。183センチ、104キロの恵まれた体格から高校通算35本塁打をマーク。右の長距離砲としての期待もかかる。「パワーを生かした長打力が1番の武器」と言い切る。筋トレが大好きで、1年冬から取り組んでいるベンチプレスは120キロ、スクワットは180キロを超える。今は打撃フォームを模索しながら木製バットを振り込んでいる。「最初は難しさもありましたが、少しずつ木製バットに慣れてきた。でも、プロの世界ではまだ通用しない」と、さらなる上積みを図る。

次は家族に恩返しをする番だ。「自分のパワーの源はご飯を食べること」。母和江さん(54)の手料理で1日に白米3、4合を平らげ、それが大きな活力となって夢だったプロの扉を開いた。佐久間は「支配下登録されて1軍の舞台で特大ホームランを打って、家族に恩返しがしたい」と力強く誓った。

プロ入りは果たしたが、まだスタート地点に立ったばかり。自らの努力で新たなサクセスストーリーを描いていく。【佐藤究】

◆佐久間拓斗(さくま・たくと)2003年(平15)7月17日生まれ、福島県福島市出身。小2から船引スポーツ少年団で野球を始め、船引中(福島)軟式野球部。田村では2年秋から主力として活躍。183センチ、104キロ。右投げ右打ち。遠投105メートル。家族は両親と兄2人。好きな言葉は「初心忘るべからず」。趣味はカラオケ。