野球振興を理念に掲げる巨人が、23年からの本格活動を目指して「女子硬式野球チーム」を新設することが6日、分かった。NPB球団の女子チームは西武、阪神に次いで3球団目。チーム名は未定で、来年4月からトライアウトを実施しチームを編成する方針。まずは1期生として8月の全国高校女子硬式野球選手権で優勝した神戸弘陵(兵庫)のエース島野愛友利投手(3年)ら4選手の入団が内定した。8日の「読売巨人軍2021シーズン感謝祭in国技館」でお披露目される。

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女性版“巨人の星”が現実のものとなる。巨人が女子野球界への本格参戦を決めた。宮本和知球団社長付アドバイザー(57)をアドバイザーとした女子硬式野球チームを新設する。活動開始は23年で、来年4月以降にトライアウトを実施。約1年間かけて、チームの骨格をつくっていく。

男子同様に「常勝」を目指すべく、巨人に縁のある女子高校野球界エースの“獲得”に成功した。8月の全国高校女子硬式野球選手権で神戸弘陵を優勝に導いた、最速124キロ右腕・島野の入団が内定。島野は18年に大淀ボーイズ(大阪)のエースとしてジャイアンツカップに出場し、女子初の優勝投手に輝いた。9月14日には巨人-DeNA戦の始球式で3年ぶりに東京ドームのマウンドに立ち「感謝の気持ちでいっぱいです!」と凱旋(がいせん)を果たした。

入団後は幼児から小学生を対象とした野球教室「ジャイアンツアカデミー」のコーチなどをしながら、練習に打ち込む予定。U-18女子代表の経験があり19年1月には現役だった阿部のグアム自主トレに参加経験のある平成国際大・金満、至学館高・吉安、大体大・山下とともに「1期生メンバー」として、新たに球団史に名を刻むことになる。

近年、女子野球の競技人口は増加している。W杯(世界選手権)では日本代表が08年から6連覇と実力も世界一。今夏の高校女子選手権が史上初めて甲子園で男女同日で開催されるなど、注目度も高まっている。巨人は関東女子硬式野球連盟が主催するリーグ戦「ヴィーナスリーグ」を06年から支援するなど、女子野球の普及に尽力してきた。かつて、原監督も「やっぱりチームを持つということはいいことですよね。夢に向かって頑張れる道があるというのはいいこと。女子野球も戦う場所があるとね。何と言ったって世界一だから。何連覇もしてるんだから」と女子チーム設立の重要性を訴えていた。球団は女子野球や女子選手の魅力を伝えるだけではなく、新たなファン層の開拓や野球の競技人口拡大にもつながると判断し、新チーム創設へと踏み出した。

2月には巨人の春季キャンプに参加する予定。男子チームとともに野球に打ち込むことは、ジェンダー平等への取り組みを発信することにもなる。1934年12月26日に前身の大日本東京野球倶楽部として設立されて今年が誕生87年目の伝統球団が、女子野球という新たなフィールドで、新たな挑戦を始める。

◆島野愛友利(しまの・あゆり)2004年2月20日生まれ、大阪市出身。2人の兄の影響で野球を始め、大淀ボーイズでは背番号「1」をつけ、ジャイアンツカップ決勝では最終回のマウンドに立ち、胴上げ投手になった。神戸弘陵では今夏の全国高校女子硬式野球選手権で優勝。甲子園で行われた決勝は「3番遊撃」で出場し、2番手で最終回を3人で締め、胴上げ投手となった。

◆女子野球の現在 今年は全国高校女子硬式野球選手権の決勝が史上初めて甲子園で開催されるなど、注目を集めた。全国高等学校女子硬式野球連盟には43校が加盟。昨年4月には西武の「埼玉西武ライオンズ・レディース」がNPB球団名を冠した初めての女子公式野球クラブチームとして活動開始した。2月には女子硬式野球クラブチーム「阪神タイガース Women(ウィメン)」も活動開始した。それぞれ母体球団と同仕様のユニホームやキャップを使用。金銭的な支援はないが、高校、大学卒業後の女子野球選手の受け皿になっている。一方で、09年に創設された日本女子プロ野球機構は7月に所属選手が0になり、活動を休止している。