前ロッテヘッドコーチの今岡真訪氏(47)に在籍4年間の挑戦を聞いた。

18年から3シーズンは2軍監督として球団のサポートを受けて組織作りを推進。今季は優勝こそ逃したが、総合力を高めて2年連続2位に押し上げた。阪神での現役時の経験も生かし、教えることと見ることの「1対9」の指導哲学を確立する。安田尚憲内野手(22)や藤原恭大外野手(21)、山口航輝外野手(21)ら期待の若手にエールを送った。【取材・構成=酒井俊作】

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-11月のクライマックスシリーズ敗退直後、4年間在籍したロッテ退団が発表された。いまの思いは

今岡氏 最後まで優勝争いをしたなかで、リーグ優勝できなかった責任を感じています。本当に、いい経験をさせていただいた。

-18年から3年間は、2軍監督としてチームの土台作りに専心してきた

今岡氏 就任当初は休日に食事が出なかったり、いろいろ寮に改善すべきところがありました。そこから組織作りを3年間、行いました。大事にしていたことをフロントの方に聞き入れてもらえました。千葉ロッテ球団に感謝しています。

-休日の食事がなければコンビニ弁当になりかねない。体が資本の選手にとってマイナスだ。「トレーニング・休養・食事」を連動させてシステム構築した

今岡氏 寮生活において特に高卒からの3年間は体を作ること、ウエートトレーニングが大事な時期で、技術練習よりも優先すべきです。この考えから、管理栄養士の方がつくようになり、寮や遠征先でも栄養面をチェックしてもらえた。

-心構えも大事になる

今岡氏 2軍では、ウオーミングアップを大事にしなさいと言ってきました。すごく緊張感がある。ストレッチから無駄口をたたくなと。2軍は投手、野手、コーチらスタッフ全員がそろうのがアップだけ。1日の最初がちゃんとしていたら、ちゃんとした空気を保てる。ゆるい空気はありません。

-通例よりも、専門的な知識を持つポジションを生かしているように映る

今岡氏 いまは、誰か1人のコーチがマンツーマンで人を育てる時代ではありません。トレーニングコーチから選手の細かな体調面の報告があれば練習メニューも変更していきます。食事とトレーニング、寮生活。すべて一体化させ、連動させる組織作りの大切さを球団が理解してくれた。

-練習では動かず、見守っている姿が印象的だ

今岡氏 私の指導は「1対9」でいいと考えます。教えるのが1で、見るのが9。コーチが教えすぎないことです。えてして、よく教えるコーチは自分がやりたいだけか、自分のアピールをしたいだけが多い印象ですね。私は選手が聞いてきたら教えるし、必要なときにはとことん教えます。

-プロは個々の自覚がすべて。コーチは選手の野球人生のすべてを背負わない。選手とコーチの関係性は永遠のテーマになる

今岡氏 私も若い選手のころ、身をもって経験しています。結果が出ないとコーチからいろいろなことを言われまくる。でも、結果が出なくて、悪い評価をされるのは選手です。自分でやるしかないんです。

-2軍監督時代から見てきた安田、藤原、山口が1軍の戦力に台頭しつつある。言葉を掛けるなら

今岡氏 寮や食事など、環境で球団にこれだけバックアップしてもらった。あとは、やるのは彼ら。体作りなど管理された3年も終わり、結果を出せと言いたい。「己で考えて、己で責任を取れ」ということ。自分で考えて練習しなさい、人に甘えず、自分で責任を全部、背負いなさいということ。もう、そういう立場。大いに期待しています。

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◆今岡真訪(いまおか・まこと)1974年(昭49)9月11日生まれ、兵庫県出身。PL学園-東洋大を経て96年ドラフト1位で阪神入り。03年首位打者、05年打点王。10年ロッテに移り12年引退。通算1309試合、1284安打、122本塁打、594打点、打率2割7分9厘。引退後は阪神やロッテでコーチや2軍監督を務めた。