反骨心を胸に-。阪神ドラフト1位の森木大智投手(18=高知)が6日、兵庫・西宮市内の選手寮「虎風荘」に“原点”のボールを持参して入寮した。昨夏の高知大会決勝で明徳義塾に敗れた際の「ウイニングボール」。高校時代は甲子園にたどり着けなかった右腕が、悔しさの詰まった白球に飛躍を誓った。

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ドラフト1位ルーキーが旅立ちの日に、特別なボールをその右手で握りしめた。自身がつかんだ勝利球ではない。悔しさのこもった白球だった。

「夏の県大会の決勝で負けた時、球審の方から『持っとけ』と言われてもらったボール。『プロでも頑張ってくれ』っていう思いなのかなと思って、この悔しさを忘れないようにと思って」

昨年7月28日、夏の高知大会決勝で明徳義塾に敗戦。甲子園へのラストチャンスを逃し、涙を流して整列する森木に、球審を務めた中川裕次郎さんから明徳義塾のウイニングボールが手渡された。森木は相手エースの代木大和(巨人)に渡してほしい、と1度は断ったが、「『悔しさをバネにして頑張ってほしい』っていうのが伝わったので、もらいました」と右手でポケットにしまった。ベンチで涙に暮れた忘れられない「敗戦球」だ。

中川さんは、森木の故郷である土佐市に隣接する須崎市で普段は郵便局員として働く。高知を代表する両雄の決勝戦は「ジャッジ1つで(流れが)変わってしまうかもしれない。緊張して前夜はなかなか眠れなかった」と、プレッシャーがあったという。審判という立場上、個人へのエールは避けたが「あの時は、3年間お疲れさまという意味で渡しました」と当時を振り返った。

森木にとっては「行き詰まった時に触ったりするのかなと思います」という原点の1球。プロの壁にぶつかった時には当時の悔しさを思い返し、自身を奮い立たせてくれるはずだ。

「もうプロに入ったので、これから1日1日大切に生活して、小さい子たちから憧れられるような大きい選手になりたい。目指すところは世界一の投手。志を高く持ってやっていきたいと思います」

高知高2年秋以来の寮生活にも「分からないことはどんどん(先輩に)聞きたいですし、プライベートの話もどんどんしていきたい」と目を輝かせた。高校3年間届かなかった甲子園のマウンドで、今度はたくさんの「勝利球」をつかみにいく。【中野椋】

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〈阪神近年の主なドラフト1位選手入寮〉

◆藤浪晋太郎(13年)デスクトップ型のパソコンを持参。ダルビッシュやロジャー・クレメンスら、大投手たちの動画を収録。「研究に使います」と気を引き締めた。

◆大山悠輔(17年)持参した赤色グラブを披露。黒色ベースに赤色ラインが入ったものと、赤茶色のものの2種類。手袋など他の装備、大好きな赤を使用する考えを明かした。

◆佐藤輝明(21年)地元兵庫・西宮市のふとん店でオーダーメードした、約50万円の特注マットレスとともに現れた。「めちゃくちゃ眠れます」と語り、さっそく感触を確かめた。