今、伝えたいことがある-。阪神近本光司外野手(27)が10日、沖縄・宜野座キャンプで恒例の1日キャプテンを務め、禁断の“監督イジり”で笑いを誘った。Tシャツの背中に「矢野さん、監督やめるってよ」と記し、ナインに「僕たちがやることは一緒。うまくなるために考えて練習すること」と呼び掛けた。今季限りでの退任を表明した矢野監督を笑わせ、仲間にはプロとしての姿勢を求めた。選手会長がユーモアたっぷりにチームをまとめた。

【関連記事】阪神ニュース一覧

近本がTシャツの背面を披露すると矢野監督も笑わずにはいられなかった。「矢野さん、監督やめるってよ」。12年公開で話題になった映画「桐島、部活やめるってよ」になぞらえたメッセージは、今季限りで退任する意向を示した指揮官への“イジり”。デリケートなテーマながら、全体練習前の円陣でざわつき以上に笑いを巻き起こした。

選手会長として伝えたかった思いをナインに訴えた。「自分の核となるもの、信じるものを持ってください。矢野さんは今年でやめます。(でも)僕たちがやることは一緒です。うまくなるためにしっかり考えて練習することです」。キャンプイン前日の衝撃発表から10日。周囲の状況に関係なく、プロとして当たり前の姿勢を求めた。

近本は「言いたいことはあったんですけど、それだけじゃ逆に伝わらない」と迷った末に、「矢野さん使っていいんかなあ…みたいな感じで使っちゃった」と経緯を明かした。前日9日に考え、決断までは20分ほど。ナインの心に響きさえすれば、「あのタイトルがどうとか、あんまり関係なかった」とまで言った。

矢野監督は「俺のことイジってる」と温かく受け止め、背番号5も「矢野さんは(映画のタイトルを)知っていたんで。矢野さんらしく受け止めてもらったかな」とホッとした。昨季はリーグ最多178安打でベストナイン、ゴールデングラブ賞。不動のリードオフマンに対して指揮官は今キャンプで唯一、中堅のレギュラーとして確約している。厚い信頼があるからこそ発信できた、ユーモアと情熱だった。【中野椋】