節目の舞台はハラハラだった。西武増田達至投手(34)が史上18人目の150セーブを達成した。1点リードの9回に登板。安打、四球、犠打で1死二、三塁とサヨナラのピンチを招いた。ポーカーフェースも内心は「やってもうてるわ…」。ただ修羅場こそ強いから守護神に君臨する。後続を断った。ウイニングボールをポケットにしのばせ、「1人では達成できないポジション。皆さんに感謝しながら、自分の中ではうれしく思う」とかみしめた。

その心はクローザー像とは違い、少し独特かもしれない。“負け”を認め、仕事に徹する。試合の勝敗を決する場面を担う抑えは、ブルペン陣の中で最も難攻不落な存在が多い。ただ、増田は違う。はっきり言う。

「自分の中では平良に全部負けている。総合的に」

客観的に自己分析しつつ「平良と対戦するんじゃないのでね」と笑う。その上で譲れない芯の強さを備える。「任されたところをしっかりやるだけ」と打者1人1人、1球1球に集中し、魂を込めてきた。ともに自主トレをするオリックス平野佳からは、調子がいい時も悪い時も「いつも一緒の気持ち」で投げることを教わった。その積み重ねが今だ。

5勝0敗33セーブだった20年オフに4年総額12億円超(推定)の大型契約を結んだ。ただ昨季は下半身のコンディション不良で0勝3敗8セーブ、防御率4・99。「少なからず、ありました。でも仕方ない」。どうしても耳に入るネガティブな声も復活の肥やしにした。今後の目標は「数字は意識しない。1試合でも多くチームに貢献」。大きなことは言わない。目前の仕事に徹する。何とも増田らしかった。【上田悠太】

▽通算157セーブの西武豊田投手コーチ(増田の150セーブに)「ライオンズ一筋で150セーブをあげたことは素晴らしく、とてもうれしく思います。これからもたくさんマウンドに上がって、1つずつ積み上げていってほしい」

▽西武エンス(先発で7回7安打1失点)「ストライクを積極的に取りに行くことで7回を投げ抜くことができたと思う。ランナーを出す場面が何度かあったけど、慌てずに落ち着いて投げられたのがよかった」

▼通算150セーブ=増田(西武) 1日のオリックス9回戦(京セラドーム)で今季6セーブ目を挙げて達成。プロ野球18人目。初セーブは15年9月8日のオリックス19回戦(西武プリンスドーム)。

◆増田達至(ますだ・たつし)1988年(昭63)4月23日、兵庫県生まれ。柳学園-福井工大-NTT西日本を経て、12年ドラフト1位で西武入団。1年目はセットアッパー、16年からクローザーとして活躍。15年最優秀中継ぎ投手、20年最多セーブ。19年9月11日ソフトバンク戦で通算100セーブ達成。20年オフにFA権を行使し残留。180センチ、88キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸3億円

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