虎党がつかの間の夢を見た。阪神大山悠輔内野手(27)が9回裏に一時同点となる7号2ランを放った。2点ビハインドの9回裏2死一塁。カウント0-2から巨人デラロサの変化球を左翼席へ運んだ。敗戦まであと1球から粘りを見せ、2戦連続完封負けを阻止。チームは敗れたが、悩める男の1発が明日への希望だ。

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勝てばヒーロー。負ければ戦犯。12球団随一の注目度を誇る人気球団で主力を張る厳しさを、大山は人一倍知っている。

「キャンプで早出特守をする時にしても、自分の中でテーマを掲げて練習していたとしても、ちょっとでもポロッとすれば『何をやっているんや』となる。やっぱり難しい部分はありますけどね」

苦笑いで本音をこぼしたこともある。

「でも去年、良いことも悪いことも経験した。まだ5年ですけど、プロで5年間やった経験はあるので」

背中の痛みやスランプに悩まされた昨季の経験が、背番号3の心をたくましくしている。

チームは開幕直後の大不振が響き、いまだ最下位に低迷。自身も打率2割台前半と苦しんでいる。各方面からの厳しい声は当然、耳に入っていることだろう。それでも前向きな姿勢を貫く姿勢にブレはない。

「下を向いても仕方がないので」

5時間3分に及んだ延長12回の激闘に敗れた夜。何度となく聞いている主砲の言葉が身に染みた。【遊軍=佐井陽介】

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