終始降りしきる8月の雨は、むしろ心地よかった。DeNA今永昇太投手(28)が、中日を8回4安打無失点で9勝目を挙げた。

「雨が降る中で投げるのはそこまで苦手ではない。不用意な中途半端な半速球、そういう失投がなかったのが良かった点」。その言葉通り甘く入る球は皆無。特に前半は付け入る隙を与えることなく、118球を投げ抜くエースの投球だった。

点差が広がるたびにより大胆に、そして安定感を増していく。2点援護を受けた4回、2死二塁で5番阿部を内角低めへの148キロ直球で空振り三振。4点差に広げた6回は安打を許すも併殺打、7回は3者凡退に抑えた。97球。「もしかしたら9回いけるかもしれない」と完封の絵を描き臨んだ8回2死から2連打を浴びた。「自分で勝手にストーリーをつくってしまった。そこが余計」。それでも0行進で切り抜け、9回は委ねた。

8月は無双だった。月間5戦5勝。球団では横浜時代の99年6月の川村以来で、左投手では唯一の57年8月の権藤以来、65年ぶりだった。今永の8月の防御率1・25。その裏で少しだけマインドを変えた。「絶対に負けられない、いい投球をしないといけないとか、周りに求められる像を自分でつくり出す必要はない。ありのままの姿で投げればいいんじゃないかなと。いい意味で解放されて臨んでいる」。かつて自ら作り出し、勝手に背負った重圧に比べれば、雨にぬれたユニホームは軽いものだった。

首位攻防でヤクルトに3戦全敗し、4連敗で迎えた一戦で勝利が持つ意味は大きい。今季チームが連敗中での先発は、4戦全勝の連敗ストッパーは、まさにエースの働き。三浦監督も「確かに先週4連敗でちょっとブレーキかかった感じでしたけど、また加速させてくれた」。ホームで、エースが勝つ。最高の再スタートとなった。【栗田成芳】