ロッテ山口航輝外野手(22)の打球が、夜空に高々と舞い上がった。

「上げようともしてないですし、勝手に角度がついていい感じに上がっているので」

ライナー性が多い本塁打が最近、高く上がるようになっている。この日も楽天ファンの悲鳴とともに左翼席へ近づき、インパクトから6秒4の時を経て、スタンドに吸い込まれた。

点差を一時5点に広げる、貴重な11号3ランになった。本塁打11本のうち6本が3ラン。「3ラン多いっていうのは今年の印象で。打点とかも多く稼げてるので、そこはいいと思います」。11発で25打点。19試合連続で4番に座るスラッガーに、いよいよ本格化の兆しが見えてきた。

「まだレギュラーでもないですけど、こうして多くの打席をもらって、その中で何とかしようと思ってるので。去年はしがみついているような感じでやってたんで。この打席、この1日を打たないと明日出られないという力みもあったので。今は打席の中で落ち着いて、しっかりやるべきことを考えて打席に立っているので、そこがいいところだと思います」

経験を積む、では許されないチーム状況でもある。この日の勝利をもってしても、まだ5位。残り18試合。「大事な試合なのは分かっています」。初回、いきなり1番山崎剛のライナーで頭上を抜かれかけたが、なんとかグラブに収めた。高い緊張感の中、主軸として奮闘する9月だ。

この日は中秋の名月。三塁内野席の背後には、試合開始から満月が浮かんでいた。右翼の山口からはよく見えたのでは。

「いや、全然見てなかったっす。ほんまや。きれいっすね」

試合後、取材を終えるとようやく左翼席上空まで上がった満月を眺めた。

試合序盤はくっきりとしていた中秋の名月は、不思議なことに劣勢の中盤は雲に隠れ、最後にまた鮮やかに仙台の夜空を彩った。

「雰囲気もよく来てると思いますし、ここから本当に勝利を積み重ねていかないとCSも出れないと思うので、その勢いをつけれるように頑張っていきたいと思います」

熱い秋へ、迷いなく。月に向かって打つ。【金子真仁】