難攻不落のオリックス山本を攻略する上で、「里崎指数」の持つ意味が鍵を握る。日刊スポーツ評論家・里崎智也氏考案の指標を用い、見どころを解説する。【データ=多田周平、取材・構成=井上真】

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投球回数を盗塁の企図数で割ると、1盗塁企図に要したイニングになる。この里崎指数が高いほど走者は盗塁への意欲が低く、低いほど意欲が高くなる。

里崎氏 プロ野球ファンの皆さんの中には、盗塁は強肩捕手が阻止するという考えが多いと思います。それも見どころのひとつですが、そもそも走る意欲を起こさせないことが、最強の盗塁対策と言えます。

山本が先発の77%で若月が先発マスクをかぶっている。山本-若月で148回を守り、企図15回。100イニング以上守ったバッテリー26組のうち企図15回はワースト4位。里崎指数9・87はワースト6位だ。

里崎氏 このデータからは、山本-若月の盗塁への意識が低いと思われるかもしれませんが、そう言い切れない部分を解説します。

山本は防御率1・68で15勝5敗。被打率も対右1割7分0厘、対左2割1分6厘。193回を投げて137安打と抜群の数字だ。

里崎氏 今季の全試合をチェックしてきた上でこう考えます。今の山本から得点を奪うのは極めて困難であると。犠打で送りタイムリー待ちではなく、1イニングに複数安打は望めない以上、走って得点圏に進める。こういう相手ベンチの戦略を感じます。同時に、これだけ揺さぶられ、なおこの好成績に、山本の質の高さが表れています。

今季2ケタ許盗塁のバッテリーは4組。それでも山本-若月(11許盗塁)のシーズン成績は突出する。

里崎氏 ソフトバンクは出塁したら、まず盗塁で二塁が最善の攻略法と感じます。周東、牧原大の俊足がいれば、山本も警戒せざるを得ない。「山本対機動力」の構図に引き込めば、山本も打者への集中力を欠く可能性があります。

そもそも山本相手に出塁数はそうは望めない。それでもソフトバンクは数少ない出塁にかけるしかない。

里崎氏 無死で出塁できれば、犠打で二塁に送るより、リスクはあっても盗塁で無死二塁を目指したい。そうすれば、犠打で1死三塁も見えてきます。クイックを駆使しつつ機動力に動じない山本か、周東らの快足で鉄壁の山本-若月に攻略の糸口を見いだすか。興味は尽きません。