ソフトバンクの宮崎秋季キャンプに、米大リーグパドレスから傘下マイナー所属の投手2人や投手コーチら、計6人の視察団が「研修」に訪れている。経緯や狙い、そして実際に訪れて驚いた点はどんなところなのか。大リーグでのフロント業務歴30年以上の現パドレス環太平洋オペレーション部長、エーシー興梠氏(56)に話を聞いた。

視察団派遣のきっかけは、日本の野球に造詣の深いA・J・プレラーGM(45)の熱意だった。レンジャーズのアシスタントGM時代にダルビッシュや元広島のルイスを獲得した経歴のあるプレラーGMについて、興梠氏は「日本に30回以上スカウティングに来ていて、日本の野球に詳しい。日本の野球が大好き」と言う。

また、今季パドレスのプレーオフメンバーにも入った元ソフトバンク・マルティネスや元阪神スアレスらの活躍もあり「どうやって、3Aの選手たちが日本に来て、良くなって帰ってくるのか。日本の育成法をうちにも取り入れたい」と、数年間の準備を経てキャンプ視察を実現させた。

参加している2Aのヘンリー・ヘンリー投手、1Aのダンカン・スナイダー投手はソフトバンクの投手陣とともに練習をこなす。3Aのマイク・マッカーシー投手コーチがその様子をチェックしながら、選手の感想を聞き、疑問はソフトバンク側にぶつけ、リポートを作成している。帰国後にプレラーGMら首脳陣に成果を報告する運びとなっている。

第1クールの視察で一足先に帰国する興梠氏は、まずは練習前の準備への丁寧さに舌を巻いた。「アメリカのマイナーだと『早くボールを持ってブルペンに行くぞ』という感じ。こちらはじっくりウオームアップして、キャッチボールも時間をかける。アメリカではケガも多いわけですね。小さいことですけど大事なこと。取り入れたい」。ソフトバンクのキャンプでは準備運動に30分以上、キャッチボールにも30分近い時間をかけ、グラウンドに集合してからブルペン投球を開始するまでに少なくとも1時間半ほどかけている。

興梠氏はトレーニング面についても「理論がしっかりしている。投手コーチの方たちが教えてくれたのが、ランニングで土台を作って、スプリントやダッシュを入れて、野球につながるようにしている。それが理論的にわかります。考え方、理論、練習法。そういうものも持って帰ると思います」と、長期スパンで段階的に組み立てた練習メニューに感銘を受けた様子だった。

パドレスの視察団はキャンプ最終日まで参加予定。興梠氏は「今度は(ソフトバンクから)パドレスのキャンプに来てもらったり、交流を続けていけたら」と、日米の異例の交流を前向きにとらえ、キャンプ地を後にした。

【関連記事】ソフトバンクニュース一覧