守乱改革へ「三種の神器」を伝授! 日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)が9日、キャンプ臨時コーチとして4年ぶりに阪神復帰を果たした。指導初日は約1時間30分にわたって特守で実演指導。木浪、中野、小幡の二遊間トリオに早速、ゴールデングラブ賞5度の堅守ポイント3個を授けた。チームは昨季まで5年連続で両リーグワースト失策。レジェンドOBの金言も糧に守備強化を図る。

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鳥谷臨時コーチが動けば、観客も球団関係者も報道陣も動いた。19年以来、4年ぶりの虎復帰。特守の指導でサブグラウンドに移動すると、岡田監督はもちろん杉山オーナー、百北球団社長まで後を追った。

「マスコミに囲まれ、ファンに囲まれ、懐かしい感じがします」

指導初日を終えた直後、本人はただただ照れ笑いするしかなかった。

虎ジャージーを羽織り、全体アップ前には「平田さんに負けないように声を出します」と笑わせた。午前中は各選手のプレーをじっくり観察し、コーチ陣とは対話の連続。選手の特徴と首脳陣の方針を綿密に把握した上で、午後は満を持して特守指導に移った。

約1時間30分にわたって木浪、中野、小幡を指導。17年球宴で使用したデニム柄グラブを相棒にノックを受け、身ぶり手ぶりで技術を伝え続けた。重視したのは3つのポイントだった。

<1>「捕る」「投げる」を一連の動作で

「『捕る』と『投げる』がバラバラになっている選手がいるので、一連の動作の中で送球まで持っていこう、と。体の使い方次第で送球を楽にできる」

<2>捕球時の幅を作る

「前に出たり引いたり、いろいろなバリエーションを持てば、困った時に使える。体感して、使ってもらえたらという感じで」

<3>二塁送球しやすい体の角度を探す

「(遊撃手は)二塁送球の際、自分で投げる角度を作らないといけない」

丁寧かつ的確な金言の数々に、後輩3人は目を輝かせ続けた。

遊撃レギュラー有力候補の22歳小幡は「すごく分かりやすかった。体に染み込ませたい」と感謝。以前はバウンドが合わずゴロと衝突するケースも少なくなかったが「前後の幅があればエラーも少なくなる」。引っかけ送球が多かったという二塁送球に関しても「左足を引くことで投げるスペースができてスムーズに投げられる」と納得顔だ。

チームは昨季まで5年連続で両リーグワースト失策。ただ、レジェンドOBは分かりやすい数値には興味を示さない。

「エラーがどれだけ得点に直結しているか。エラーが多いから負けるわけでもない。投手が打ち取ったものをアウトにする。あとはダブルプレーを取れるかが重要になってくる」

指導期間は11日までの残り2日間。虎の守備強化を願い、惜しみなく技術を伝授し尽くす。【佐井陽介】

〇…鳥谷臨時コーチはWBC戦士の後輩にもなる中野にエールを送った。自身は13年に本職ではない二塁で大会途中からレギュラー昇格。「レギュラーで試合に臨むのと、後から行くのでは難しさが違う。選手に聞きながら自分の形をつかんでいってほしい」と期待。特守で指導も受けた中野は「(捕球時に)顔が離れて遠いと言われていて、前にも出るのも1つだと。守備で踏ん張る時に太ももを使うと疲れるけど、股関節を入れることで、その体勢は打撃に生きてくるとも言ってもらいました」と充実感を漂わせた。

◆鳥谷敬(とりたに・たかし)1981年(昭56)6月26日生まれ、東京都出身。聖望学園-早大を経て03年ドラフト自由枠で阪神入り。2年目の05年に遊撃の定位置を獲得。04年から18年にかけての1939試合連続出場はプロ野球2位、12年~16年の667試合連続フルイニング出場は同5位。11年には最高出塁率。阪神在籍中の出場2169試合、同2085安打はともに最多。20年ロッテに移籍し21年引退。通算2243試合、2099安打、138本塁打、830打点、打率2割7分8厘。ベストナイン6度、ゴールデングラブ賞5度。現役時代は180センチ、79キロ。右投げ左打ち。

▽阪神木浪 試合になったらどうしても力が入る。力を抜く練習も意識しないといけないということ。間があれば、足を運ぶのもスローイングも楽になるということも教えてもらいました。明確なことをいろいろ教わったので、次に生かしていきたい。

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