これが野球だ。巨人岡本和真内野手(26)が今季1号アーチで“完全試合”を阻止した。

阪神村上が7回に完全投球のまま降板。8回先頭、2打席凡退に封じられた智弁学園(奈良)で2学年後輩の右腕ではなく、2番手石井との対戦だった。その初球、148キロ直球を捉えた。左中間席への1号同点ソロ。44打席目で前日まで打率3割9分5厘も、0本塁打0打点だった珍現象に終止符を打った。

走者すら出せなかった中、代わりっぱなを同点アーチで試合を一時振り出しに戻した。後輩のプロ初勝利を1球で打ち砕いたのは何かの縁か。野球の面白さ、怖さ、難しさが詰まっていた。

WBCでは米マイアミの球場の雰囲気を全身で味わった。短期決戦で一戦必勝のヒリヒリ感の中、歴代最強といえるチームメートと日々全力でプレーした。巨人では不動の三塁でも、侍ジャパンでは一塁に加え、左翼も守った。世界一メンバーとして凱旋(がいせん)した帰国会見で「野球ってこんなに楽しかったんだなと思いました」としみじみ言った。

今季初の感触で笑顔を満開に咲かせて味方ベンチに戻った。ナインは大盛り上がりで流れは巨人ペース…と思われたが、10回に決勝点を奪われた。10回1死一塁、本塁打でサヨナラの場面で岡本和に打順が回ったが、侍ジャパンで同僚だった湯浅に一邪飛に抑えられ、「負けたら意味がないので、明日勝てるように頑張ります」と次の戦いに目を向けた。

野球は厳しく、面白くて、難しい。世界の舞台で野球の魅力を再認識した。岡本和にとって「野球とは、ファンと共にあるもの」。だから明日も明後日も、その次も打つ。【小早川宗一郎】

■初の延長落とし原監督「2点目がね」

今季初の延長戦となる接戦を落とした。阪神先発村上に7回まで完全投球を許した。8回に一時同点とするも延長10回にバッテリーミスも絡み決勝点を奪われた。原監督は「(阪神村上に)いい投球をされましたね。まあ、やっぱりなかなか2点目がね」と指摘。6投手のリレーで2失点だった投手陣は「責められないところはあるけどね」とかばった。

▼巨人大久保打撃チーフコーチ(阪神村上について)「想定外はマッスラの曲がり幅が思ったより広かった。(交代は)代えてくれたらというのもあったし、もう(体力が)落ちているというのもあった」