<ヤクルト4-2阪神>◇30日◇神宮

ドラフト1位ルーキーのヤクルト吉村貢司郎投手(25)が、プロ初勝利を手にした。6回97球を投げ2安打8奪三振1失点の好投。7連敗中の泥沼だったチームを救い、4位に再浮上した。小学2年で志したプロの道。練習場所を求め父と公園を転々とした中学時代。国学院大、東芝と2度のドラフト指名漏れも経験した苦労人らしく、5度目の先発マウンドでついに勝利の女神がほほ笑んだ。

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「人生で一番きつかった」。ヤクルト吉村がそう振り返るのは中学時代。足立ベルモントボーイズの休日練習以外の平日は、自営業だった父裕二さん(62)と二人三脚の個人練習だった。

ボーイズに所属していた関係で中学の野球部には入れなかった。そのため日々、練習場所を探して近所の公園を転々。午後3時30分から同6時までの「1部」が終わると母身知子さんが準備してくれる夕食を食べ、「2部」として同7時30分から同9時30分までの夜間練習をこなした。

バレーボール出身の裕二さんはもともとは野球素人。それでも「本やネットでめちゃ勉強してくれた。何か聞けば必ず答えが返ってきた。その場で分からなくても翌日には調べて分かるように示してくれた」。

中学を卒業し「2部練習」は幕を閉じたが日大豊山、国学院大、東芝と進んでも毎年欠かさない慣例がある。年末年始のキャッチボールだ。ヤクルト入寮直前の今年も、裕二さんは軟式ミットで吉村の140キロ超の球を座って受けた。

「両親には不自由なく野球をやらせてもらいました。本当に感謝しています。初勝利はやっぱり両親に贈りたい」。親と子。その1日、1日の接し方が未来を変えた。【三須一紀】

◆吉村貢司郎(よしむら・こうじろう)1998年(平10)1月19日、東京都生まれ。日大豊山では1年夏からベンチ入り。3年夏の東東京大会では決勝でオコエ瑠偉(現巨人)を擁する関東第一に敗れた。国学院大-東芝を経て、22年ドラフト1位でヤクルト入団。4月2日広島戦でプロ初登板。今季推定年俸1600万円。183センチ、85キロ。右投げ右打ち。

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