2年ぶり56度目の本大会出場を決めたパナソニック(門真市)のベンチでは、昨年から同チームのコーチを務める鳥谷敬氏(41=日刊スポーツ評論家)が試合の行方を見守った。イニング間にはナインを出迎え、追加点を手にした際にはベンチから身を乗り出し、喜びを爆発させた。

9回裏に6点リードを3点差まで迫られただけに「勝てて良かった」とホッと一安心。試合後は「ここがスタート。勝たないと反省できない。反省できることに感謝しよう」と選手に声をかけた。

決勝打を放った法兼(のりかね)駿内野手(28=亜大)は、鳥谷氏について「ジーッと相手を見ていて、質問したら試合中でも教えてくれます。経験したからこそ、わかりやすく教えてくれる。(自分たちにも)納得できるように話をしてくださる」と感謝した。

テレビ解説や評論活動、メディア出演などで多忙を極める鳥谷氏は、今予選でようやくベンチ入りを果たせた。選手時代は「(勝負の中で)これはいけるっていうのがわかった」と言うが、コーチである今は「それが全く分からない。『大丈夫かな』という思いは選手より生まれやすい」と苦笑いだ。

この日は相手チームのOBで特別コーチを務める福留孝介氏(46)もスタンドで観戦。親交の深い阪神時代の先輩だけに「福留さん、いました?」とうれしそうにニッコリ笑った。

社会人チームにかかわる元プロのレジェンドは増えており、同じ近畿地区では日本新薬(京都市)で元ヤクルトの宮本慎也氏(52=日刊スポーツ評論家)が臨時コーチを務めている。

鳥谷氏は引退後の社会人チーム指導について「自分が唯一野球をやっていて経験できなかった。引退してから自分のやってことがないことを経験してみたいので」。都市対抗の本大会についても「予定が合えばベンチに(入りたい)」と力を込めた。【中島麗】