6月の第3日曜日は「父の日」。ときに厳しく、そして優しく育ててくれた父との思い出、感謝をプロ野球選手たちが語った。

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阪神中野拓夢内野手(26)は幼少期、父茂明さん(58)から打撃を教えてもらえなかった。小学2年時、地元山形の天童北部レッドジャイアンツで野球を始めると、自宅ではバットを握らせてもらえなかった。

4年時には右翼のレギュラーになった。ただ、6年生の速球を打ち返すことができない。「今岡選手みたいなバッティングをしたいのに、僕はお父さんから教えてもらったことない!」。虎党の中野家で育った10歳の訴えも、聞き入れてもらえなかった。

体の小さい息子に、まずは守備を極めさせよう-。親心からくる指導だった。就寝前には必ずマンツーマンレッスン。部屋の明かりを薄暗くし、2、3メートルほどの至近距離で父から投げられるスポンジボールを素手でつかむ特訓を行った。反射神経を磨き、手のひらの真ん中でボールをつかむ感覚を養った。

今だから分かる。「体も小さかったし、守備を鍛えないと試合には出られなかった。今にもつながっている部分はあると思います」。二塁コンバートされた今季、華麗なプレーを幾度となく披露している。父の断固たる決意が、息子の守備の礎を築いた。【中野椋】