<セ・CSファイナルステージ:阪神4-2広島>◇第3戦◇20日◇甲子園

阪神坂本誠志郎捕手(29)が、2度の勝ち越し打で日本シリーズ進出に貢献した。4回に左前適時打、同点に追いつかれた6回には右前適時打を放ち、試合を決めた。捕手として投手陣をまとめ上げ、3連勝に貢献。攻守で背番号12が輝いた。

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悲劇の仲間を救った夜がある。5月11日ヤクルト戦(甲子園)。救援登板した石井にプロ初勝利がついた試合後のことだ。笑顔のはずの右腕が、暗い顔をしていた。腰を痛めていた。

「大丈夫か? 病院紹介するで」

異変を察知した坂本は駆け寄った。日付を越えても、緊急治療にも対応してくれる西宮市内の治療院に、すぐさま連絡を入れた。後輩は午前2時ごろまで治療を受けた。結果的に腰の骨に亀裂が入るほどの重傷。ただ、「誠志郎さんが紹介してくれなかったら、どうなっていたことか…」と深夜の応急処置のかいもあり、約1カ月で1軍に戻ることができた。

「もちろん大智のためでもあるんだけど、早く戻ってきてくれることがチームのためでもあるから」。いつでも仲間を、チームを思う男だから、そう言える。「当たり前のことをしただけですよ」。そんな優しさで、日本一へ突き進む虎を包み込んでいる。【阪神担当 中野椋】