涙の親子鷹プロが誕生した。社会人野球・ENEOSの度会隆輝外野手(21=横浜)が、公表していた中日に加え、DeNA、ロッテと3球団から1位指名を受け、競合の末、DeNAが交渉権を獲得した。元ヤクルト度会博文氏(51=現ヤクルトアカデミーヘッドコーチ)を父に持ち、プロ野球選手の“DNA”が流れる社会人最強野手。横浜高時代の3年前には、指名漏れの屈辱を乗り越え、1位指名を勝ち取った。

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お立ち台にいるかのようにタオルを掲げた。度会は1位指名で交渉権を得たDeNAが、シーズン中のヒーローインタビューで行う定番のセリフをリクエストされ「アイラブヨコハマですよね。得意です!」と、何度も“予行練習”を連呼。「小さいころから大好きなチーム。応援もかっこよくて、ファンの方もチームの雰囲気も温かくて。少しでも貢献できるように全力でやっていければ」。指名直後、流したうれし涙はすっかり乾ききっていた。

相思相愛が結実した。出身地・千葉から横浜高に進学。3年前のドラフトでプロ志望も指名漏れの悔しさを味わった。ENEOSでの3年間も神奈川で過ごし「ENEOSで走攻守最強の選手になると掲げて入ってきた」。昨年出場した都市対抗野球で大会4本塁打を記録しMVPにあたる橋戸賞を獲得。3年間公式戦通算打率3割5厘、14本塁打で、長打率は5割7厘と、社会人最強野手の肩書を得て迎えた運命の日だった。

父は元ヤクルトの博文氏で、そのDNAも生粋のプロ野球の血が流れる。幼少期から身近にあったプロの世界。「お父さんはプロの舞台で15年間やっていてずっと憧れの存在。いつかお父さんの言葉で『隆輝、俺を超えたな』っていってもらえたら親孝行になる」。一緒に見守った博文氏からは「ありがたいんですけど、目標をもうちょっと高くしてもらって、超一流プレーヤーになってもらえたら」とエールを受けた。

今月10日に、横浜スタジアムでの練習試合でDeNAと対戦したばかりだった。「アウトにはなってしまったんですけど、しっかり芯でとらえた打球も何本かあったんで、いい感触、いいイメージがあった」とアピールも実った。「見ている人が元気になるような、笑顔にできるような選手になりたい」。明るく、元気に、ハキハキと。横浜スタジアムでの躍動する姿を思い描いた。【栗田成芳】