ミスターから慎之助へ-。巨人阿部慎之助新監督(44)が2日、長嶋茂雄終身名誉監督(87)から直電を受け、激励された。宮崎秋季キャンプ2日目の朝、就任後初めてのやりとりに、あらためて「優勝」という目標を再認識した。2年連続Bクラスからはい上がるため、心を鬼にして、練習では若手選手らにハッパを掛けた。

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スマホの向こう側から、ミスターの激励が届いた。秋季キャンプ2日目の朝、阿部新監督が直電を受けた相手は、長嶋終身名誉監督だった。「2年連続Bクラスだから、厳しくやるのは当たり前だ。来年優勝してほしい」。療養を続けるミスターの言葉に、44歳の新指揮官は「激励いただいたんで、ありがたいなと思いますね。なかなか電話に出ないみたいなんだけど、つないでいただいて」と背筋を伸ばした。

ミスターと阿部。ドラフト1位で入団した01年、ミスターの監督最終年だった。「僕は1年目で1年しかやらせてもらえなかったですけど、もう見ての通りですよね。神様」という存在。17年に通算2000安打達成した際、名球会ブレザーの贈呈役もミスターだった。監督就任後、初めての直接のやりとりに「声、元気そうだった。笑った時、大爆笑していたんで」。自然と込み上げる情熱をグラウンドにぶつけた。

今季ブレークした秋広に密着マーク。下半身強化のトレーニングでは、とことん追い込んだ。打撃練習でもティー打撃、フリー、ロングティーと徹底マーク。「すぐ手を抜くから抜かせない」。初日から体重3キロ減量した身長2メートルの未完の大器に「今日は6キロ。6キロいって7キロ食べようって。絞り上げて、侍に行っていただきますよ」と、6日合流予定の侍ジャパンを前にハッパをかけ続ける。

照り付ける太陽の下で、1年後の「優勝」を強烈に意識させられた直電。「きつい練習したか、しないかで、精神的な強さも弱さも出てくる。ひっぱたかれて何クソと思ってやってきた時代とはもう違う。練習メニューの中で厳しさを与えないと、精神修行はできない」と、心身の鍛錬はまだ始まったばかり。ミスターの声に後押しを受けながら、心を鬼にして野球と向き合う。【栗田成芳】

◆阿部監督と長嶋終身名誉監督 阿部監督は、ミスターが監督として獲得した最後のドラ1戦士だった。中大時代の00年、巨人を逆指名し、ドラフト1位で入団。開幕戦でスタメン起用され、球団で23年ぶりとなる新人捕手での開幕スタメンとなった。初打席で2点適時二塁打を放ち、4打点と活躍した。07年6月9日楽天戦では、巨人4番デビュー戦で長嶋も王もやっていない史上初の2本塁打。その3試合後にも2発6打点で、長嶋氏から「阿部の4番はいい。ふさわしい働きをする」と絶賛された。13年にはキャンプを訪れたミスターから「球場に来たら監督のつもりでやりなさい」とアドバイスされ「こういうことを言っていただいたのは初めて。重みのある言葉だった」と感謝した。19年の引退試合では東京ドームを訪れたミスターを原監督とサプライズでお出迎え。ホームランも放ち「やっぱり大したものだよ」と称賛された。

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