“秘密”の決め球と“謎”ニックネームで、いざ新人王へ! ソフトバンク4位指名の明大・村田賢一投手(22)が5日、都内の同大学野球部寮で指名あいさつを受けた。

村田は140キロ台の直球と変化球のコンビネーションを駆使し、抜群の制球力で試合をつくる実戦向きの投手で、大学通算15勝を挙げた。4年になると、明大の先輩に当たる広島森下やDeNA入江らも付けたエースナンバー「11」を背負った。指名あいさつを終え「楽しいことが多い4年間だった。3回優勝できたのもチームの力。仲間に感謝したい。プロでは先発をやりたいって気持ちがある。1年間通して勝ち続けられる選手になりたい」と大学生活を振り返り、抱負を語った。ソフトバンク福山龍太郎スカウト(47)も「制球力と試合をつくる能力を評価させてもらった。ウチには速球派が結構いるけども、コントロールを武器としたピッチャーとして、先発にチャレンジして欲しい」と期待を寄せた。

数字が物語る。東京6大学リーグでは通算36試合、159回2/3で479個のアウトを積み重ねた。そのうち5割以上の241個が内野ゴロによるもの。今春のリーグ戦、4月22日の慶大戦では9回98球で完封。27個のアウトのうち15個を内野ゴロで奪い、打者8人連続で内野ゴロを打たせるなどを翻弄(ほんろう)した。ソフトバンクは野手陣の守備率が9割9分と12球団トップタイを誇る。内野ゴロを量産する村田にとって、最適の球団のひとつと言える。

また、通算で与えた四死球は32個で与四死球率は驚異の1・80をマークした。同リーグからプロ入りした投手で、通算与四死球率1点台は、11年ドラフト1位で明大から広島に入団した野村祐輔投手(34)以来となる(同率1・68)。通算奪三振数も97個で、奪三振率5・47と決して低い数字ではない。「三振を狙わないわけじゃないですけど、少ない球数で抑える努力をしている」と状況に応じてギアを上げる。リーグ戦での1イニング当たりの投球数は約14球で、100球以内での完封を意味する「マダックス」も2度記録した。

この数字を支えるのが門外不出の「シンカー」だ。直球が元々シュート気味に変化する。それと同じ軌道から130キロ台中盤と少ない球速差で、打者の手元で鋭く変化する。そしてこの球を打者の左右関係なく投じ、ゴロを打たせ、時には決め球として三振を奪ってきた。ルーツは春日部共栄時代に「左バッター対策を練らないと」と投げ始めた。だが参考にした選手などはおらず、握りや落ち幅を独自開発。大学ではチームメートや他大学の選手に投げ方を聞かれても「秘密」と応える。「たぶん他の人が投げたら肘いっちゃうんで。投げたくても投げられないと思います」と代名詞となった。

謎の愛称が付けられている。明大入学後、知人からX(旧ツイッター)で「ナセル」と呼ばれるように。自身も「名付け親も理由は『非公開』でということなので、僕もよくわからないんですけど」と首を傾げる愛称だが、またたく間に大学野球ファンに浸透した。プロ入り後も「たぶん(ナセルで)いきますね」とニックネームは継続予定(?)だ。

ソフトバンク先発陣は今季12球団で唯一、規定投球回に到達した投手がゼロ。「新人王を目指していくしかない」と福岡の“ナセル”が必殺シンカーを引っさげ、アウトを重ねていく。【黒須亮】