阪神が来季の本拠地開幕権を辞退した。プロ野球が開幕する3月末は、甲子園では高校野球のセンバツ大会が開かれる。そこで近年、阪神が開幕権を有するシーズンは、オリックスの本拠地である京セラドーム大阪を借用していた。ところが、来年はそのオリックスにも開幕権がある。当然ながら、京セラドーム大阪はオリックスが使用。そういう事情から、阪神は開幕権辞退に至った。

ここで、あらためて気付かされたことがある。セ・リーグとパ・リーグで本拠地開幕権の決め方が異なっているのだ。

セが2年前、つまり22年シーズンの上位3チーム(ヤクルト、DeNA、阪神)に開幕権があるのに対し、パは3年前、つまり21年の上位3チーム(オリックス、ロッテ、楽天)に開幕権がある。

“1年のズレ”は、どうしてなのか?

原因は12年前、11年シーズンにさかのぼる。当時は、パもセと同じく2年前のAクラスが開幕権を持っていた。09年に球団初のAクラス入りを果たした楽天は、仙台で開幕を迎えるはずだった。ところが、3月11日に東日本大震災が発生。楽天の本拠地・Kスタ宮城(現楽天モバイルパーク)も大きな被害を受け、2週間後に迫るロッテとの開幕戦ができる状況ではなくなった。そもそも、プロ野球自体、開幕できるのか、危ぶまれた。

なんとか4月12日に開幕を迎えられたが、シーズン日程はリセットせざるを得なかった。楽天はビジターのQVCマリン(現ZOZOマリン)でロッテ戦。次のカードでホーム試合を行ったが、場所は甲子園だった。仙台で、本当の意味でホーム開幕を迎えたのは、4月29日だった。

楽天は、待望の本拠地開幕の機会を失った。

ただ、翌12年シーズンの日程を決めるにあたり「仙台で開幕戦を」の声がリーグ内で挙がる。

震災で傷ついた仙台、東北の人たちのために、との思いからだった。

そこで、それまでの2年前ではなく、3年前のAクラスに本拠地開幕権を与えることにした。それにより、09年にAクラス入りした楽天が仙台で開幕を迎えられることになった。2年前のままだったら、10年はBクラスだった楽天は仙台で開幕できなかった。

コロナ禍で、パは4年前となった時もあったが、震災以降「セ・リーグは2年前、パ・リーグは3年前」という“1年のズレ”で落着している。

実は、パも元の2年前に戻そう、という声もあった。15年、16年は2年続けてAクラスの顔触れが同じ(ソフトバンク、日本ハム、ロッテ)。18年の日程を決める際、3年前の15年ではなく、2年前の16年の順位を本拠地開幕権に反映させることで、そのまま2年前に戻そうという案。先の3球団にそろって1回分、開幕権を返上してもらうということだ。だが、やはり「せっかく勝ち取ったものだから」という考えから、見送られた。

2年前でも3年前でもなく、いっそ今季の順位を来季にすぐ反映させた方が、ファンも盛り上がるのでは、とも思う。ただ、日程作成上、時間的に難しいという(20世紀までは、そうしていたが)。

なぜ、セとパで“1年のズレ”があるのか。

分かりにくいと思われても仕方ない。しかし、背景には東北の球団を抱えるパ・リーグならではの、ファンへの思いがあった。そう考えれば、また違った印象を受ける。【NPB担当=古川真弥】