日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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阪神対オリックスの日本シリーズは、はからずも今後の野球界の在り方を投影した。まさにかくあるべきといえる日本一決戦だった。この組み合わせ以外だったら、激しい論戦が生じて、しらけていたのかもしれない。

死に物狂いで143試合を戦い抜いた両軍の息詰まる展開は、日本一を決めるにふさわしかった。59年ぶりになった関西ダービーの話題は、オールドファンのノスタルジーをくすぐったことだろう。

シーズンオフは球団フロントが“主役”で、腕の見せどころだ。日本シリーズ出場権をかけるCS(クライマックスシリーズ)を含めたポストシーズンは改正されるべきだ。

この間、接触を試みてきた複数の球界関係者のうちの1人は「おそらく話し合わざるを得ない」と打ち明ける。「でもパ・リーグが反対するかもしれない」とセ・パ各リーグの温度差も示唆した。

大差をつけられて後塵(こうじん)を拝したチームのCS参戦に「グラウンドの選手は後ろめたいのでは?」と問うと、ある球団首脳は「そうは思わない。そこも査定対象になっている」と年俸に反映された真剣勝負を強調した。

阪神も、オリックスもリーグ優勝を決めた後、1カ月以上も待たされている。シリーズの本番まで、せっかくの野球日和だというのに、練習試合を繰り返す光景はもったいなくてナンセンスとしか言いようがなかった。

「大リーグのようにダブルヘッダーで日程を詰めることは出来ないものか?」との問いに対する、球団、球場関係者の答えは「ノー」だった。

「特にセ・リーグは4球団が屋根なし球場だから難しい」「観客の入れ替えに時間がかかる」「放送局、スポンサーとの契約にかかわってくるから」

今年は“真”の日本一決戦になった。「下克上」といわれる下位チームの順位争いが消化試合の減少につながっているから、経営者サイドも簡単には譲歩しないだろう。だが少なくともルール変更は行われるべきだ。

今年はWBCの熱狂ぶりが、そのままプロ野球の流れになった。一時の人気にあぐらをかけば、足をすくわれる。野球人口の減少傾向も深刻化してきた。ポストシーズンをはじめ改革に着手したい。その必要性が浮き彫りになった日本一決戦になった。