初陣を勝利で飾った侍ジャパン井端弘和監督(48)が、ようやく頬を緩めた。

送り出したラインアップが序盤苦戦。6回途中まで無得点どころか安打も打てなかった。7回に森下が仕留めた1発で緊張がほぐれると、9回に打線9人による3得点で突き放した。勝利の瞬間は「とてもホッとしてます」。この一言に尽きる。「序盤から重苦しい空気だったが、特に投手陣が粘ってくれたのが勝利に結びつけられた」と、完封リレーの投手陣をたたえた。

初陣を前に打撃練習中、捕手古賀に声をかけた。「元気がないな」。24歳以下または入団3年目以内を中心とした若侍。試合前練習からチーム内に充満した緊張感を察した。「初戦というところで練習中も口数が少なくて。そうしたら彼(古賀)が声出しで選手に言ったので。なかなか普段通りは難しい」。指揮官の言葉に即座に反応した古賀が、試合前の円陣でリラックスポーズで鼓舞。それをパフォーマンスに、チーム初安打を打った門脇の塁上で発生し、森下の先制弾では、喜ぶベンチも球場も一体化させた。今大会の象徴になり得るムーブメントを広める発端は、指揮官のひと言からだった。

3月のWBCで世界一までたどり着いた侍のバトンを託された井端監督は、目先の勝利よりもその先を見据えている。前回17年アジアチャンピオンシップに出場し、6年後のWBCにも選ばれたのは5人だけ。「5人ですよね。もっといてもいい。全員入ったっていいくらい」。若侍の成長を願いながらタクトを振り、初勝利をもぎ取った。

台湾といえば「井端」だ。13年WBC2次ラウンド台湾戦。1点を追う9回2死から同点適時打を打ったのが、当時37歳で日の丸を背負った同監督だった。次は韓国戦。「韓国も苦しんで勝った。明日は違う形で来ると思う。それにのまれず、日本も最初から攻めたい」。再び頬を引き締め、たくましくなった若侍とともに挑む。【栗田成芳】

○…古賀が「リラックスポーズ」の火付け役となった。打撃練習中に井端監督から「みんな緊張しているんじゃないか」と直接声をかけられ発奮。ポーズ発案者の秋広と仕込んだ。試合前円陣で「ここでは、これでいきましょう。みなさんリラックスで」と声を張り上げ、秋広は両手をひらひらして実演。「ペッパーミルがはやったんですけど」とWBCでのブームに対抗? したパフォーマンスは、決起集会の乾杯時に秋広が始めたもの。チーム内に早くも浸透したようだ。

【アジアCS】井端ジャパン初陣白星で飾る!台湾先発に苦戦も4得点完封リレー/ライブ詳細