青学大(東都大学)が日本文理大(九州3連盟)を投打で圧倒し、春、秋リーグ戦、全日本大学野球選手権に続く、史上5校目の4冠へ好発進した。楽天ドラフト6位の1番中島大輔外野手(4年=龍谷大平安)が5打数3安打1打点。支えてくれた車椅子の父へ優勝を贈る決意だ。日体大(関東5連盟第2代表)は酒井成真外野手(1年=東海大菅生)の2打席連続本塁打で天理大(関西5連盟第1代表)を下し、慶大(東京6大学)は環太平洋大(中国・四国3連盟)を破り、4強入りした。

   ◇   ◇   ◇

試合前、中島は「緊張で体の動きづらさを感じた」という不安を、一振りで打ち消した。初回、カウント1-2からの直球を捉え中越え二塁打で出塁。2番佐々木泰内野手(3年=県岐阜商)の中前適時打で50メートル5秒9の俊足を生かし一気にホームを陥れた。2回には2死一、二塁から左前適時打。「なんとしてもチームを引っ張りたかった」。第3打席の左前打の後はしぶとく四球を選んだ。

原点回帰が中島を変えた。1年秋から出場したが勝利に貢献できず、試合後ベンチ裏で涙したことがある。何が足りないのか。「大学生になってうまく見せようとしていた。小さいころから貫いてきた泥くさく一生懸命やるのが一番かっこいい。プライドは捨てる」。常に全力疾走を胸に掲げ、チャンスに強くなった。

家族の存在が中島を支えている。父・憲一さんは日高高中津分校(和歌山)でプレーしていたが、高校時代に交通事故にあい脊髄損傷。下半身不随になり野球を断念。現在は車椅子生活を送っている。中島は小1で父に勧められ野球を始めた。小さいころは、車椅子の父にキャッチボールの相手をしてもらうのが楽しみだった。「大体20メートルくらいの距離から、頑張って投げてくれた。ティーも投げてくれました」。坂道では父の車椅子を押しながら、野球談議に花を咲かせた。

「今までずっと僕の野球を支えて、応援してくれた。感謝しています。だから父の喜ぶ顔が見たい」。学生野球の最後を、優勝で飾り、最高の形で感謝を贈る。【保坂淑子】