阪神ドラフト1位の青学大(東都)下村海翔投手(4年=九州国際大付)が上々の「虎デビュー」を飾った。日本文理大(九州3連盟)との初戦に先発し6回2/3を2失点(自責1)にまとめて4強進出を導いた。高校以来の打撃でも逆方向への大飛球と犠打2つ。セ・リーグの野球に不可欠なセンスも披露した。史上5校目の「4冠」を手土産に、阪神入りする意気込みだ。

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174センチと小柄な背番号11が「投打」で輝いた。阪神からドラフト1位指名された下村が、7回途中5安打2失点。肌寒い天候の中、自慢の制球は思うように定まらなかった。それでも得意のカットボールやカーブを軸にした組み立てで、傷口を最小限にとどめた。

「チームが勝ったのが一番で、投球には全然満足していません。ドラフト前はスカウトを意識しながら投げていたので、今日は楽しくできるかなと思っていたけど、ドラフト前より重圧がありました。見られているし、期待もされているので」。10月26日に1位指名を受け、取り巻く状況が大きく変わった。“虎の一員”としての神宮初登板は空気が違ったが、自分の投球を見失うことはなかった。

センスを示したのは投球だけではない。東都リーグはDH制のため打席に立ったことはなかった。それでも2回の第1打席は1球ごとに楽しそうに笑みをこぼし、粘った末の9球目を振り抜くと、逆方向の右翼への大飛球。フェンス手前で好捕されたが、大学野球ファンも見たことがない「打者下村」に大きな拍手が起こった。

九州国際大付(福岡)時代は下位打線。強打者ではなかったがバッティングは好きで、バットもこだわって準備した。「練習も全くしていないので楽しむしかないな、と。忙しかったです。いい経験になりました。打撃もおろそかにしないようにしたい」とセ・リーグでのプレーも見据えた。

第2、3打席は犠打を決めた。ともにファウルのあとの再挑戦でしっかり転がした。第4打席は三ゴロで全力疾走。楽天から6位指名された快足の同僚・中島大輔外野手(4年=龍谷大平安)より「50メートル走は速いです」という野手顔負けの身体能力も大きな武器だ。

強心臓も持ち合わせている。6回2死一、三塁のピンチ。相手の三塁コーチとベンチから突然「ボーク! ボーク!」と大声が飛んだが、無表情でプレートを外した。「(動揺は)そこまででも。冷静でした」とサラリ。冷静なメンタルはプロでも強みになる。

大学生活を締めくくる有終のビッグタイトルを狙う。春秋の東都リーグ戦と6月の全日本大学選手権を合わせた「4冠」へあと2勝。今日19日は富士大(東北3連盟)と戦う。「明日も投げるつもりで準備します」と力強かった。【柏原誠】

【阪神来季の先発候補】

◎村上

◎伊藤将

◎大竹

○青柳

○才木

○西勇

△西純

△ビーズリー

下村

富田

門別

 

◎=当確、○=有力、△=候補、無印=期待