日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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初めての冬を迎えた日本ハムの本拠地「エスコンフィールド北海道」は、勇壮にそびえ立っていた。三角になった屋根はうっすらと雪が積もって白化粧。シーズンオフの“ここ”だけでしか見ることのできない風景は美しかった。

年間入場者数では、札幌ドームだった昨シーズンを大きく上回った。例年は沖縄だった秋季キャンプもほぼ無料のエスコンフィールドで開催した。11日間で約10万人を集客するなど、開業1年目は成功を収めたといえる。

昨年から、一部球団からクレームがついていた。公認野球規則(2・01)「競技場の設定」は、本塁からバックネットまでの距離が60フィート(18・288メートル)以上が必要と規定している。それが50フィート(15・24メートル)で基準を満たさなかったのだ。

基本的に日本の公認野球規則は、米大リーグのそれを翻訳している。原文にある「Recommended」(推奨)を、日本は「必要とする」と言い換えていることから、解釈の違いが生じて問題化した。

当時コミッショナーの斉藤惇は、12球団の代表者を前に「欠陥球場」とまで指摘した。だが大リーグの現状は、必ずしも規定に固執せず、変形スタジアムが存在しているのも事実。球場とファンの“臨場感”という距離を大事にしたいからだ。

「欠陥」と言われた日本ハムは「認識不足があった」と謝罪。結局は新コミッショナーに就いた榊原定征の提案という形で改修を行わず使用が認められた。だがNPBから「誠意ある金額の提示」を要求された野球振興を名目にした寄付金は、3億円強の高額だった。前代未聞の高いペナルティーになった。

さて、条文改正が議論されて継続審議だった問題だが、11月29日に開催されたプロアマ合同の日本野球規則委員会では「必要とする」とした文言を、「推奨する」と見直すことを決めた。結果的に大リーグに準じる形になったわけだ。

だからといって欠陥があった新球場を建設した日本ハムの3億円強が返却されるわけではなかろう。前にNPBは、日本ハムから支払われる寄付金の用途について「野球振興協力金」と強調したから、今後の取り組みが注目される。

駅と球場の往復が不便だったのも、徐々に解決している。来季も地方開催が実施されないのは、2軍戦でカバーも検討。ソフトバンクも当初はダイエーホークス時代から地道に努力を重ねてきたから九州の人気球団に育った。

これから改修、建て替えに踏み切る球団、球場では、ファウルゾーンを狭くし、ファンとの間をより近くしていくことが予想される。日本ハムにとっては高い「欠陥」の代償になった。それがルール改正、野球界の改革につながったのは皮肉だった。(敬称略)

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