2024年、全国の野球ファンにインプット推奨の名前がある。明大・宗山塁内野手(3年=広陵)だ。華麗な遊撃守備に強打も備え、明大からのドラフト連続指名記録を「15年」に伸ばすことが決定的なスター候補だ。今季、東京6大学野球は連盟創設99年目になる。花を添える若者が6日、東京・府中市の大学グラウンドで始動。声高らかに歌い、のろしを上げた。

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1月6日、午前8時半。紫紺の誇りを受け継ぐ野球人たちが一礼して静まり、背筋を伸ばす。内海弘蔵氏に島岡吉郎氏-。明大野球を作り上げた先達の胸像前、宗山は息を吸い込まずに自分の間で歌い出した。

「おお、明治~」

置きに行ったか、音程取りにわずかな迷いが。「その名ぞわれらが母校、おお、明治~」。仲間や師が続く。月初めやリーグ戦開催日の朝。主将の独唱から士気を高めるのが伝統だ。

「70点くらいですかね」

減点分はどこに。

「いや、ちょっと、あの、あまり声が良くなかったですね」

客観視とこだわりに、職人気質がにじむ。特に二遊間への動きが光る遊撃守備は、名手の西武源田らも含め広く球界関係者が知るところ。3年間のリーグ戦で94安打。明大の先輩高山俊(現オイシックス新潟アルビレックスBC)の持つ通算131安打のリーグ記録更新も射程圏に入る。

球界には「鳥谷敬が重なる」と、名球会選手の早大時代を引き合いに出す声もある。年末には西武渡辺GMが一般論として「1位の選手でしょ」と断言。この日訪れたスカウト陣からは「(1位で)行くか(全く)行かないか」との声も。すでにその域にいる。

春秋のリーグ優勝に全国優勝を足した4冠が目標。個人としては3冠王で「打率5割、5本塁打」と掲げる。ドラ1級の評価でも「まだまだ成長できる部分はあります」と貪欲だ。

校歌だって、そう。田中武宏監督(62)は言う。

「出だしだよ。出だし(の歌声)が小さいんですよ。村松も希由翔も、みんな回を重ねるごとに良くなった。宗山も先月よりかは多少、上がったかな」

ヤクルト丸山和、中日村松、ロッテドラフト1位上田希由翔…。代々の主将も少しずつ殻を破った。野球も独唱も同じ。どう勇敢に切り出すかが試される。田中監督は続ける。

「注目される中、丸山も村松も希由翔も同じ主将の立場で最終学年のプレッシャーをはね返していった。同じことができないと一緒の世界には行けない。彼にも今晩、食事するので言おうかなと思います」

ホルモンをつついて託される“負けるな”の願い。歯を食いしばり、現状に甘んじず、応えてみせる。

もちろん「おお、明治」だって70点じゃ終われない。「もっと成長すると思います」と主将の重大任務へも飽くなき向上心。その名ぞ、宗山塁。端正なマスクがまばゆい朝日に照らされる。【金子真仁】

◆宗山塁(むねやま・るい)2003年(平15)2月27日生まれ、広島県三次市出身。広陵野球部出身の父の影響で野球を始め、高陽スカイバンズから広陵。18年選手権、19年センバツ出場。明大では1年春からリーグ戦出場。趣味はサッカー観戦。175センチ、79キロ。右投げ左打ち。