首都大学野球の日体大は11日、横浜市内の同大グラウンドで練習始めを行った。石川県能美市出身で今秋ドラフト候補に挙がる最速153キロ右腕の寺西成騎投手(3年=星稜)は、「僕は直接被害は受けていないですが、同じ県の知人のお宅も被害にあったと聞いている。今年、僕がプロに行くことで、それが小さなニュースではあっても、元気だったり励みを与えられたらと思います」と、被災地への思いを口にした。

地元へ帰省中の1日、星稜の同級生4人とともに母校グラウンドで練習中に、地震が起こった。「すごい揺れました。大津波警報が鳴ったので」。幸い、星稜のグラウンドは山側にあったが、みんなで山の方に避難した。「家族とはすぐに連絡がとれて、みんなそれぞれに避難。当日中に家に帰られましたが、自分は友人の家に泊めてもらいました」。深夜、何度も余震に目が覚めた。「こんなに大きな地震は初めてです」。恐怖を感じながら、元旦を過ごした。

寺西の地元はほとんど被害がなかったが、テレビで目にする被害に、言葉を失った。今、自分にできることは何なのか。自分に問いかける。答えは、自分の活躍で元気を与えることだった。

高2夏に右肩を痛め、3年春に手術。長いリハビリ期間を経て昨春復活。主戦として活躍し、チームをリーグ戦3連覇、明治神宮大会4強に導いたが、先発で最長は7回。体力面が課題として残った。今年は完投、完封を目指し、体力づくりに、緩急をつけるためにカーブを習得中。平均球速を上げ、勝負をかける。「大学野球も最後の年。チームの優勝はもちろん、プロ野球を目指して、1日1日、頑張ろうという気持ちです」。多くの人たちの思いを背に、寺西は腕を振る。【保坂淑子】