日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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沖縄県のプロ野球キャンプは、初日から気温が25度まで上昇し、2日目も夏日だった。宮崎県内は雨天のキャンプインになったから、いきなり差をつける形になった。

通算37回目のキャンプイン取材だが、広島・呉の南海は雪かき、阪神の高知・安芸もまさかの積雪、ダイエーのハワイ、ニューヨークメッツのフロリダもてんやわんやだった。

今年も沖縄県内には、日本のプロ野球チームが14カ所(1軍9球団、2軍5球団)に集結した。韓国からも現在の2球団に加え、後から2球団が来沖することになっている。

阪神宜野座で初の土曜日だった3日は約7000人を集客。早速、日本一効果が表れた。昨年はまだ新型コロナウイルスのPCR検査を受けて取材していたから、その現実を忘れてしまいそうなにぎわいだ。

沖縄県文化観光スポーツ部・スポーツ振興課班長・中村孝一も「沖縄にも熱狂的な阪神ファンが多いので、メディアなどの報道を見ると盛り上がっているのが伝わってきますね」と盛況ぶりを認める。

同県の「スポーツアイランド沖縄」構想も第2期に入っているが、プロ野球キャンプ誘致を「アウター施策」と定める。ここ数年の経済効果の推移をみると“負の時代”を脱出したといえるだろう。

23年のプロ野球沖縄キャンプの経済効果は101億5300万円で、3年ぶりに100億円超えた。コロナ禍で無観客だった21年(23億6600万円)を考えればV字回復した。

中村は「昨年のキャンプも人数制限のない有観客でしたが、今年は空港のにぎわい、メディアの取り上げられ方なども含めて、キャンプで盛り上がっている感覚があります」と手応えを感じている。

沖縄県では今もNPB以外のアジア近隣国からキャンプ実施の申し入れを受ける。しかし、現状では県内でキャンプができる球場が少なくなっている事情がある。

宮古島の離島・伊良部島、中頭郡嘉手納町の一部で、野球場など環境面の整備が進んでいるが、プロ野球を誘致できるかどうかは先行き不透明だ。

それでも県は消費活動を刺激しながらスポーツ市場の拡大を図る。昨春キャンプで好評だった「スタンプリー」、各自治体との「コラボレーショングッズ」など、沖縄キャンプ独自の商品・企画に力を入れる。

経済効果の過去最高は19年の141億3100万円(りゅうぎん総合研究所調べ)。中村は「去年の数字は上回ってほしい」という。野球人気の低下を食い止めるために、その一助になる沖縄の前向きな取り組みはカギを握る。(敬称略)