悪夢の幕開けでも、阪神大竹耕太郎投手(28)は努めて冷静だった。

初回の初球、塩見に先頭打者アーチを浴びた。9日から15試合続いていたチームの連続無被弾も途切れた。「もうその記憶を忘れて、プレーボールって感じです」。2回にはスキを突かれてサンタナに三盗を許し、犠飛で2点目を失った。

2勝目を挙げた前回20日の中日戦(甲子園)で岡田監督に助言された「もっと遊べ」。3回の先頭赤羽に85キロのスローボールを見せ、ヤクルト打線に迷いを生じさせた。「そういう遊び心をより持って投げられました」。3回から6回まで走者を出さない快投。5回の逆転劇を呼び込んだ。

7回、サンタナを79キロの超遅球で惑わせたが、直後、不運な右前打から3連打。1死満塁とされ、桐敷の救援を仰いだ。必死に応援に回った。お立ち台で「キリ、岩崎さん、ゲラ、皆さんの頑張りでここに立てている。本当に感謝の気持ちです。キリには僕から何か贈呈したい」と公然とプレゼントの約束をした。

どうしても勝ちたかった。両親や夫人が甲子園で観戦していた。おとこ気左腕はお立ち台で突然、切り出した。「私ごとですけど、明日(28日)が結婚記念日。負けられなかったです」。チームで勝ち取ったリーグトップタイの3勝目が、夫人への最高のプレゼントにもなった。甲子園でのデーゲームは通算8試合で無傷の6勝目だ。

開幕に合わせていた昨年と違い、今年はまだ調子のピークが先にある。大竹は「もっともっと(状態を)上げられると思う。こんなもんじゃない」と頼もしかった。【柏原誠】

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