<広島3-2中日>◇9日◇広島

 天谷が決めた!

 サヨナラで勝率5割だ。広島は中日に連勝し、10度目の挑戦で今季初の勝率5割に到達した。広島の5割は昨年5月27日以来409日ぶり。サヨナラ勝ちは今季2度目。2度とも決めたのは広島天谷宗一郎外野手(24)だ。天谷は5日の試合前練習に遅刻。頭を丸刈りにし、初心に戻って結果を出した。やっと届いた“借金ゼロ”。さあ、今日から貯金を積み重ねるゾ。

 サヨナラの走者が生還する前に、天谷はもう腕を突き上げていた。一塁ベースを回ったところでナインにもみくちゃにされた。ようやく起き上がると、一塁側スタンドに向かって左腕を大きく突き上げた。本当にうれしい一打。4月5日横浜戦以来のサヨナラ勝ちは、またもや天谷のひと振りで決まった。「サイコーです」。ヒーローはお立ち台で何度も繰り返した。

 不振だった。一時は3割を超えていた打率は2割6分台に。特にセ・リーグ再開後は18打数3安打の打率1割6分7厘。「いろいろ考えてしまっていた」。悩みを一掃するきっかけは、新聞記事だった。赤松や石原の「無心で打った」という紙面上のコメントが良薬になった。「無心で来た球を打とうと思った」。そして9回1死二塁、この日初めての打席。中日小林の2球目スライダーを「無心」でたたいた。打球は左中間で弾み、チームは今季初の5割に到達した。

 5日のヤクルト戦。午前10時に試合前練習が開始されたが、天谷がグラウンドに現れたのは11時25分だった。試合は14時開始。デーゲームとナイターを間違えてしまった。ブラウン監督からは「気にするな」と言われた。「普通だったら2軍に落ちる。それを残してくれた」。応えなければいけない。試合のなかった7日には理髪店に行き頭を丸刈りにした。「どこかで気がぬけていた部分もある。初心に戻ろうと思った」。反省と自戒をこめた丸刈りの頭を、サヨナラ打の後、もみくちゃにされていた。

 試合日程を半分消化しての5割は03年9月26日以来実に1748日ぶりだ。「若い選手は物おじしないね」。ブラウン監督はそう言いながら、喜びをかみしめていた。【網

 孝広】