<楽天6-0ソフトバンク>◇7日◇Kスタ宮城

 楽天田中将大投手(20)が、“予告通り”の完封勝ちで楽天が4連勝を飾った。ソフトバンク戦に先発し、9回を4安打9奪三振。「救援陣を助けます」の言葉どおりに1人で投げ抜き、「監督にウイニングボールを渡します」の言葉どおり、野村監督に手渡した。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で一流選手とともに過ごし、成長したマー君が実力を見せつけて、楽天は開幕から連勝負けなしで「未知の領域」を突っ走る。

 最後にちょっとだけ無邪気になった。完封勝利のお立ち台で、田中は少し声高になりながら「やりました!」と叫んで、ヒーローインタビューを締めた。報道陣から冷やかされると「いいじゃないですか」と照れ笑いした。初回から堂々とした投球で圧巻の4安打完封劇。お立ち台で見せた愛らしさは、投げたボールには1つもなかった。

 成長は本物だった。初回、先頭の本多に初球からいきなり3球連続して150キロ台の直球を投げ込んだ。3番川崎の3球目には自己最速に並ぶ152キロ。球速もキレも増した直球で押し優位に立った。WBCから帰国後、初登板だった中日戦でも151キロを記録したが、その時はナゴヤドーム。この日は気温が低い仙台、しかも屋外のKスタ宮城でのナイター。寒さのハンディを背負っても鈍らない球威が進化を証明した。

 唯一の不安も簡単に退けた。序盤から連発した150キロ台の直球も9回に再びマーク、計14回計測した。「抜くところは抜いて投げました。いつもの感じで投げただけですよ」と、少しだけ汗ばんだ顔で、サラリと答えた。WBCでは常に中継ぎ調整を続けてきた。124球の完封勝利は先発投手としてのスタミナへの不安を一掃した。

 時に静かに、時に激しく-。気持ちのコントロールもひと皮むけた。昨年までは初回から全開モード。強打者を打ち取るたびに雄たけびを上げた。だが逆に立ち上がりの投球にムラもあり、序盤の失点も目立った。帰国後しきりに「気負い過ぎないように投げる。自分の投球をしたい」と平常心を口にし続けた。「北京やWBCで感じるところがあった。試合に入り込むのは大事だけど、入れ込み過ぎはよくない」と、一流選手の背中を見て学んだ。勝負どころこそ声を上げたが、その他は淡々と投げ続け、時には笑みさえ浮かべた。精神的にも、もうワンランク上へ。若さと粗さが同居する投球から一変、「大人」の安定感と頼もしさがにじみ出た。

 チームは球団初を更新する開幕4連勝で首位をキープ。ウイニングボールを受け取った野村監督は「今日はマーくんの投球に酔ってました。酔っぱらったかな。真のエースはマーくん。チームのかがみだよ」と上機嫌の極み。早くもフル稼働となった中継ぎ陣を救う完封勝利をベタ褒めした。田中は「成長した部分がある。楽しんでいた部分もあった」と振り返った。WBCで「マサオ」とかわいがられた男は、「マー君」のニックネームが似合わないほど、たくましくなってきた。【小松正明】

 [2009年4月8日9時40分

 紙面から]ソーシャルブックマーク