巨人のドラフト1位ルーキー長野久義外野手(25=ホンダ)がド派手な実戦デビューを飾った。13日、宮崎キャンプで若手主体のB班の紅白戦に「3番右翼」でフル出場。7回の第4打席で左中間へ推定飛距離130メートルの3ランを放った。守っては三塁を狙った一塁走者を好返球で刺すなど、攻守に存在感を見せた。14日は、主力主体のA班の紅白戦に出場。目標の開幕スタメンへ突っ走る。

 両翼92メートルのひむかスタジアムでは狭すぎた。7回1死一、二塁の最終打席。カウント2-1で、長野の放ったライナーは文句なしだった。2年目左腕宮本の甘め直球を、迷いなく振り抜いた。左中間のネット最上部を揺らし、あわや場外のプロ“第1号”。足早にグラウンドを1周した。ファンの歓声と、仲間のハイタッチ。プロ初体験のできごとで、豪快にデビュー戦を締めた。

 それでも、冷静だった。試合後は「打ち損じが目立っていた」と反省ばかり。それまで3打席凡退で、本塁打を放った打席も3球ファウルと打ち損じた。「しっかり、やらなきゃ」と居残り特打。本塁打デビューの感慨は、どこにもなかった。高い意識とクールな頭脳は、守備にも表れた。

 「優先的にはホーム。でも、周りの人がサードだと言うのが聞こえたので」。2点リードの2回2死一、二塁、藤村の右前打を捕ると、本塁ではなく三塁に送球した。二塁走者の市川が本塁にかえるより早く、一塁走者の福元をワンバウンド送球で刺し無失点。強肩はもちろん、事前の判断と準備が生きた。風はアゲンスト。打者は長打の少ない藤村。間を破られれば同点とされるリスクもあるが、定位置より前で守った。経験のなせる業。ただ、「東京ドームや甲子園では周りの声は聞こえない。しっかりやっていきたい」と次戦しか頭になかった。

 視察した原監督は「(三塁送球は)ジャッジメントを含め、レベルの高さを見せてくれた」と褒めたが、こうも言った。「1試合、1打席で判断するつもりはない」。指揮官の方針は、長野も望むところだ。14日、A班の紅白戦にも3番で出場する。「教えてもらったことをしっかりやるだけだと思います」と言い切った。主力相手にも変わらぬプレーで、目標の開幕スタメンへ1歩ずつ向かっていく。【古川真弥】

 [2010年2月14日8時8分

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