<広島7-6阪神>◇10日◇マツダ

 失速気味だった助っ人に明るい光が差した。7回マット・マートン外野手(28)に15試合ぶりの11号が飛び出した。マルチ安打も10戦ぶり。好調のクレイグ・ブラゼル内野手(30)も3試合ぶりの35号。両助っ人合わせて46発は95年グレン、クールボーの45発を15年ぶりに塗り替えた。毎回2ケタ安打をマークし打線も復調の兆し、11日も助っ人の打棒が大きな頼りだ。

 残念ながら、試合を左右するアーチにはならなかった。ド派手な特大弾でもない。会心の当たりとも言えない。それでも重い、重い意味を持つ1発だ。マートンが長いトンネルを抜け出すきっかけを手に入れた。

 4点を追う7回無死。コイ戦士の完勝ムードに“待った”をかけた。カウント1-1。広島篠田の高め142キロ直球をコンパクトに押し込む。打球はやや詰まりながらも、右翼フェンスをギリギリ越えた。球宴明け初アーチは7月18日ヤクルト戦(神宮)以来、実に15試合ぶりの11号。広角に打ち分ける男らしく、右方向へ運んだ1発に意味がある。「ここ何日かは良いスイングが出来はじめているね」。赤毛の助っ人はようやく手ごたえを口にした。

 前半戦の爆発続きがウソのように、勢いが止まっていた。とらえたはずのボールをミスショットし、焦りからかボール球に手を出す毎日。右方向へはじき返すはずのボールを引っかけるシーンも目立っていた。この日まで後半戦11試合の打率は46打数8安打の1割7分4厘。7月18日の時点で3割5分9厘あった打率も1カ月足らずで3割2分台まで急降下していた。それでも周囲の心配をよそに黙々とルーティンワークをこなし続けた。「シーズンには悪い時期も必ず来るから」。開幕直後から口にしていた通り、スランプに動揺しない。敬虔(けいけん)なクリスチャンは悩める様子を表に出さず、冷静に神の助けを待ち続けた。

 この日は1打席目にもボテボテの遊撃内野安打をゲット。驚くことに10試合ぶりとなるマルチ安打も記録し、打率を3割2分9厘まで戻した。ただ、本人は2点を追う2回2死満塁、同点で迎えた4回1死一、二塁での2打席連続凡退を大いに悔やむ。「チームの勝利が一番大事。負けてしまったことが一番悔しい。前の打席でヒットが出なかったから…。良い打席を続けていかないと」。こんなものでは満足しない。優良助っ人マートン。ノルマは高く設定している。【佐井陽介】

 [2010年8月11日11時20分

 紙面から]ソーシャルブックマーク