<広島6-10阪神>◇12日◇マツダスタジアム

 連敗を5で止めた真弓阪神に「Vサイン」が点灯しましたぞ!

 2点を追った6回無死一、二塁で城島健司捕手(34)がこの日2本目となる21号3ランをぶっ放して大逆転。ここから桜井、代打狩野と3者連続アーチで突き放した。阪神の3者連発はバックスクリーン3連発の85年、そして浜中、片岡、アリアスの03年以来で、優勝イヤーに飛び出す縁起モノだ。城島は78年田淵以来となる阪神捕手の20号突破。巨人をかわして首位奪回でもう夏バテは解消や~。

 ありがとう!

 ジョー!

 あっぱれな一撃に、指揮官も最敬礼だ。城島も笑顔で二塁ベースを蹴ると、右手を握ってガッツポーズだ。試合をひっくり返す逆転の21号3ラン。ベンチ前、列の先頭にいた真弓監督が深々と頭を下げた。

 城島

 サインが変わったんでね。中途半端になっちゃいけないと思ってね、思いっきり振りました。作戦的なことは言えないけどね。勝てば、どんな試合でも、なんでもいいんです。

 2点差の6回無死一、二塁。確実に点がほしい指揮官が初球に出したサインはバントだった。1打席目に本塁打、2打席目は三ゴロ併殺打。監督が悩んだ末の一手を、城島は勝つために完遂するつもりだった。

 だが、ボールになり2球目にサインが変わった。「打て」。チェンジアップをフルスイングした打球は左翼スタンドに飛び込んだ。「あれでフン詰まりだったものが、一気に出たね。昨日ぐらいから、兆しがあった」と真弓監督は5連敗のつかえがとれた。例えば1球目がストライクでバントしていたら-。想定以上の答えを見せるのが城島の真骨頂だった。

 1打席目は左翼スタンドを越え、後方の防球ネットに直撃する場外弾。2点を追う反撃弾で5年ぶり6度目の20号に到達。阪神の捕手では78年田淵幸一氏(現OB会長)以来32年ぶりの快挙だった。

 打撃の師と仰ぐ人物がいる。ソフトバンク時代に打撃コーチも努めた金森栄治氏(現ロッテ打撃コーチ)だ。「それまでの打撃理論とは、180度とはいかないけど、それくらい違うものでしたから」。斬新な教えに衝撃を受けた。「前で打て」という一般的な理論ではなく、「つまれ、つまれ」という理論が城島の打撃を進化させた。

 メジャー時代にも、オフで帰国すればあいさつに訪れ、野球談議を交わした。08年11月、BCリーグ・石川でコーチをしていた師のもとへ足を運んだ。そこで偶然の出会いまである。同リーグの富山から育成枠で阪神入団が決まっていた野原祐と対面。「阪神入るんだって?

 がんばれよ」とエールを送った。当時はタテジマを着るとは思ってもみなかった。だが、今やチームの顔となった男にとって、これも何かの縁だったのかもしれない。

 阪神移籍後初の、1試合2本塁打。その2本目に桜井と狩野が後に続き、3者連続本塁打となった。「1本目が一番楽だよ。あとのことは知らんけど、狩野はよく打ったね」。過去にも85年や03年、いずれもリーグ優勝を果たした年に生まれている縁起物。クリーンアップが絡まない3連発は球団史上初という付録が、10年版猛虎打線の層の厚さを示している。

 連敗を5で止め、巨人が敗れ、8日ぶりに首位も奪回した。吉兆ずくめの夜。暗闇は一気に晴れた。【鎌田真一郎】

 [2010年8月13日11時1分

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