<巨人5-4広島>◇10日◇ハードオフ新潟

 巨人が小笠原道大内野手(36)の巨人移籍後初となるサヨナラ本塁打で、優勝争いに踏みとどまった。3点リードで終盤を迎えたが、中継ぎ陣が踏ん張れず8、9回で計3失点して延長戦に突入。延長10回、先頭の小笠原が広島横山から右越えに31号ソロを放ち、負ければV争いから脱落しかねない窮地を救った。

 みんなの思いを乗せたボールが、右翼へ高く舞い上がった。4-4の延長10回。小笠原の打球は、秋風が漂い始めた新潟の夜空を突き破った。先頭で広島横山の変化球を一振り。9回に追いつかれる負の流れを断ち、最後に試合を決めた。三塁を回り、ベンチから総出の仲間が待つホームに飛び込んだ。笑顔で原監督と抱き合った。「やりました!」。巨人移籍後、初のサヨナラアーチに、お立ち台の第一声も上ずった。

 たぎる熱い気持ちを、バットで体現した。「先のことを考えるより、明日の1試合を粘り強くやっていくだけ。みんなであきらめないで」。急ぎ足で帰りのバスに向かい発した言葉は力強かった。残り20試合で迎えた一戦。3ゲーム差で首位阪神を追っていた。2位中日とも2・5差。これ以上、引き離されるものか。逆転Vを信じ、明日へと続く1発を放った。

 一戦必勝の意志は、指揮官のタクトにも表れた。1点リードの9回、原監督は守護神クルーンではなく、8回途中から登板した山口の続投を選択した。執念の采配を、一塁を守る小笠原も感じたはず。その事を聞かれると「全員で戦っているんだ」と声を大にした。

 象徴的な出来事がある。バットを片手で持って行うティー打撃。自分独自の練習法を、今季は坂本、亀井、寺内ら取り入れる若手が続出。それを目にし「各自が考えながらやっている。それで失敗しても、何か新しいものが生み出されていく」と喜んだ。そして「助言?

 壁にぶつかって聞かれたら答えたい」と照れた。だが、実は違う。「いい人のものはまねしていかないと。アドバイスしていただきました」(寺内)。チームを強くする労を惜しまない。

 今季7度目の猛打賞で通算1972安打とした。2000安打まで残り19試合で28安打。原監督は「行ってくれれば、チームにも彼にも最高のニュースになる」と期待した。今季中の偉業達成へ、何よりリーグ4連覇へ、小笠原は最後まで全力を奮う。【古川真弥】

 [2010年9月11日11時12分

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