<ソフトバンク1-2日本ハム>◇10日◇福岡ヤフードーム

 勝負どころを知る職人技がさえた。1-1で突入した延長10回1死一、三塁。日本ハム森本稀哲外野手(29)は緊迫のサインにも顔色を変えず、使命を胸に秘めた。カウント0-1からの2球目。ソフトバンクの守護神馬原の外角高め速球を、冷静に殺し、一塁方向へと転がした。決勝スクイズ。今季50個目の犠打が、価値ある白星を呼び込んだ。

 快打ではなくても、思い切りはしゃいだ。「いつもの20倍くらい緊張した。監督のファインプレー。僕にバットを振らせなかったんで」。同様のケースではスクイズを嫌い、早いカウントから勝負するのがスタイル。その森本の特性を知っているかのように、梨田監督が先手を打った。「点が取れる感じがしなかった。1ボールになった瞬間にいこう」と腹を決めた。

 真っすぐか、右打者が比較的バントをしやすいカットボールで、カウントを整えにくると踏んだ。ベンチの決断に、さすがのやんちゃな元気印のひちょりも観念した。「まさか2球目のサインが出るとは思わなかった。完全に電光石火の采配でした。とにかく相手にしぐさでバレないようにすることだけ」。あっけにとられ一瞬、打球を目で追った馬原とは対照的に、笑みがはじけた。チームは接戦を制して連勝。3位ロッテへ2ゲーム差に迫った。【高山通史】

 [2010年9月11日11時13分

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