開幕候補は哲学者!?

 阪神久保康友投手(30)が22日、高知・安芸キャンプで12球団最多の304球の投げ込みを行った。自身も今キャンプ初の200球超え。微妙なボールの感覚を追求する姿に、山口投手コーチも「投げる哲学者みたいになっている」と表現。大黒柱の、飽くなき向上心は衰えることはない。

 304回の思考を巡らせた。誰もいないブルペンに久保は一番乗り。「今日は軽めに」。その言葉とは裏腹に、テンポよく投げ続ける。100、200…300球。白球はミットの油と土で黒ずみ、2度交換。200球辺りから、直球の勢いは落ちてきた。だが、思考を止めることはない。最後はブルペン捕手が音を上げた。「キリがないから止めようか」。1時間15分。終わるときには、他の9人の投手もブルペン投球を終えていた。

 久保

 気まぐれです。ボールを握って、なんとなくです。

 直感で右腕を振り続けた。16日には巨人の東野が300球を投げ込んだが、それを4球上回った。くしくも、背番号「34」にちなんだ縁起のいい球数で終えた。

 山口投手コーチ

 考えることがあったんやろ。最近は、投げる哲学者みたいになっている。イチロー的になってきたやろ。我々の範ちゅうを越えている。

 プレーだけでなく、コメントにも細心の注意と、ユーモアを盛り込むスーパースターを引き合いに出した。それほど、投手論を追求する久保の姿勢は鬼気迫るものがある。

 統一球が導入されることについても、苦言を呈していた。「今まで打たれていたボールも打たれなくなるので、技術的にはどうかと思う」。飛距離が落ち、投手有利になる状況も、投球術の向上の妨げになるというわけだ。昨季、チーム最多の14勝を挙げても、満足することは一切ない。

 ただ、気持ちだけでは投げられない。09年の阪神入団当時、山口投手コーチから1つの助言を受けたことがある。「どれだけ、長くやれるかは体幹の強さだ」。その言葉通り、久保はオフに腹背筋の強化を重点的に実践。アドバイスの主もこの日の熱投に「2年前なら投げられていない。いいピッチャーになったんだろう」と成長を感じていた。

 20日には紅白戦に登板し、前日21日は132球を投げた。キャンプも終盤に差し掛かり、疲労もピークに達しつつある。次回の登板は3月以降のオープン戦の予定。そして、3・25の開幕戦へ。考える右腕の頭の中では、すべてが織り込まれている。

 [2011年2月23日11時16分

 紙面から]ソーシャルブックマーク