最強左腕を攻略して星野楽天が対外試合5戦目で初勝利だ。チームは25日、韓国の古豪ハンファと沖縄・宜野座で練習試合。14安打8得点で勝った。相手先発は柳賢振投手(23)。国際試合で日本を苦しめた本格派左腕をファーストストライクから砕き、1回だけで5安打を集めKO。星野仙一監督(64)が傾倒している不朽の名作「ゴルゴ13」ばりの的中率だった。沈黙を破った星野楽天は、一発で獲物を仕留めるスナイパー集団に変ぼうしていた。

 3球以内で…。仕留めろ…。韓国の至宝・柳賢振を打つべし…。スナイパーたちに指令が下りた。1回、ルイーズが先制打を放ち、なお2死満塁。打席に向かうコードネーム「シャーパー」こと中島の脳裏に田淵ヘッド兼打撃コーチの言葉がよぎった。「どんどん振っていけ」。空振り、ファウルで3球目。相棒のSSK社製メープルバット「E8タイプC」が射抜いた。内角142キロの鉛球は左前に着弾し2点追加。井野も右前適時打で続く。打者一巡、単打5本の速射砲が北京五輪金メダル左腕を葬り去った。

 3球以内のヒット率は13分の10、76・9%だ…。“殺し屋”たちの司令官・田淵ヘッドは「13(サーティーン)理論」を説いた。

 田淵コーチ

 13本、安打が出たとしたら、うち10本は3球目以内に打ったものである。2ストライクに追い込まれてからは、3本だけだ。13分の3なんだ。初球から振っていかないと。

 早いカウントから仕掛ける優位性を示す確率論。1回は5安打中4本が、全体でも14安打中12本が3球目以内という事実が、13理論を実証していた。2安打の枡田は「3球以内で勝負と言われています。いつも、その意識です」。若きスナイパーに浸透してきた。

 おれには昔話をする趣味はない…。戦前「真っすぐでどんどん押してきて、チェンジアップがある」と難攻不落を覚悟していた星野総帥だが、実戦5戦目での1勝目に感慨はなかった。「ファーストストライクを積極的にいくことは非常に大事だ。みんな知らなかったんじゃないか。彼が、韓国を代表するピッチャーだということを。後で教えて、自信を持ってもらわないとな」と、指令を完遂した兵を極めてクールに評した。「ヤツは失敗しない。1発で撃ち抜く」と「ゴルゴ13」の主人公デューク東郷に心酔する。楽天の「ヤツら」も1発で打ち抜く。14安打の「ホシノ14」。今日の指令はオレ竜撃破だ。【古川真弥】

 [2011年2月26日9時11分

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