<ヤクルト6-2DeNA>◇14日◇神宮

 ヤクルトの「さかなクン」、村中恭兵投手(24)は、打ってもすごいんです。同点に追い付いた直後の4回2死二塁、右中間を破るプロ初の三塁打が、決勝適時三塁打となった。本職の投球では直球主体に押して8回9安打2失点で、2年ぶり2ケタ勝利に王手をかける9勝目をマーク。広島との激しいCS進出争いで、1ゲーム差をキープした。

 二塁を蹴った村中は、一瞬躊躇(ちゅうちょ)したようにスピードを緩め、再び三塁へ走った。「行くというのは決めていたんですけど、空回りしました」とはにかんだ。プロ7年目で初の三塁打。滑り込んだ際に送球が三塁後方にそれると、本塁を狙うそぶりを見せてストップ。また、はにかんだ。

 自身が2本のソロを浴び、勝ち越しを許した直後の4回。森岡のソロで追い付き、さらに2死二塁のチャンスだった。ホームベースからやや離れて立つ姿勢でスキを見せ、2球目の138キロ直球を一瞬で振り抜いた。試合前まで34打数5安打の打率1割4分7厘。実は大好きな打撃で、右中間を深々と割った。

 東海大甲府(山梨)では、3年夏に名門の4番を務めた。高校通算7本塁打をマーク。「しっかりとシンに当たった」とかみしめた。続く雄平の内野安打で4点目の生還。三塁に進んだことが得点につながった。小川監督は「ピッチャーもするべきことをする姿勢が良かった」とたたえた。

 本職の投球では、持ち味の直球主体に押した。前回8日の巨人戦は5回12安打5失点と崩れた。チェンジアップなど変化球を狙い打たれ、5試合ぶりの黒星。反省を生かし、勝負どころで直球を選択。球数が120球を超えた8回、1死から本塁打を打たれていた中村を2球連続内角直球で切り、続く2死一、二塁では、金城をこん身の142キロ直球で一邪飛に打ち取った。

 これで2年ぶりの2ケタ勝利に王手をかけた。投打の主役、村中のバットはツインズ西岡モデル。「ミートしやすい。振りやすい」と、何年も使い続けていた。187センチ、84キロの大きな体で、豪快に押すピッチングスタイル。打撃には意外にも、細かいこだわりが詰まっていた。【前田祐輔】