<OB戦:阪神10-7巨人>◇18日◇甲子園

 甲子園のファンの期待に応えてみせた。巨人OBとして打席に立った清原は、阪神OB藪をにらみつけた。初球、その投球が頭の後ろを通過すると、ヘルメットをたたきつけ、マウンドへ駆け上がろうとした。あわや乱闘。両軍ベンチから選手が飛び出し、なんとか事は収まった。

 4万人の観衆が、個性派集団の戦いに注目していた。清原対藪。死球の因縁を持つ相手と対して、最大限に球場を盛り上げた。「これだけの人が見に来てくれている。日本代表の試合の3倍入った。これがどういうことなのか考えないといけない」。キューバとの強化試合第1戦(16日、福岡)は1万7468人だった。この日の第2戦(札幌ドーム)が2万1236人。代表戦よりも、引退した選手の試合に注目が集まる事態を憂慮した。

 違いは個性だと認識している。「昔、野生の王国っていうテレビが人気だった。それはいろんな珍獣や猛獣が出てくるから。ウサギやイヌばかりでは、そんなに人気は出ない。今の選手は、もっと個性を磨かないといけない。中にははみ出し者がいてもいい」。ライオンやアナコンダがいないと、野球界は注目を浴びない。人気も出ない。

 セルフプロデュースという点では、清原は真剣に考え続けてきた。この日も、ユニホームのズボンを特別に注文し、ヒザ丈で、股に張りつくぐらいきつめのデザインのものにした。「Kドッドや」と、ヤンキースのAロッドのスタイルにならってファンの目を楽しませた。

 打撃でもガッカリさせてはいけないと、神宮室内で打ちこみ、スイングを重ねてきた。江夏から打った右前打はその成果。強烈な当たりで健在ぶりを見せた。つくりあげた自分のイメージを崩さない努力は、並大抵では済まない。「今の野球は、銀行員が野球をやってるように見える。もっといい意味で毒があっていい。プロ野球も野生の王国にならないと」。強くて、人気のある野球界の復活へ。若き代表選手たちに思いを託した。(敬称略)【竹内智信】

 ◆野生の王国

 63~90年まで主にTBS系でゴールデンタイムに放送された、動物をテーマにしたドキュメンタリー番組。世界各地の動物の生態系について映像、ナレーション、専門家の解説を交えて紹介した。猛獣が獲物をとらえ、肉を食いちぎるなどインパクトの強いシーンも多く、お茶の間で人気だった。

 ◆清原VS藪の因縁

 97年8月20日の巨人-阪神21回戦(東京ドーム)の6回。松井(前レイズ)が本塁打を放った直後、藪が清原の左腕に死球を与えた。これに清原が激高、マウンドの藪に3本指を立てて「これで3度目やぞ」と詰め寄った。試合後の清原は「今度当てたら、しばく」と怒りは収まらなかった。翌98年7月10日の同カード(東京ドーム)の5回には、右手親指に死球を受けた清原がマウンドに向かうと、両軍入り乱れて乱闘寸前の騒ぎになった。清原は「仏の顔も三度まで、とあるがそれを超えとる。今度来たら(藪の)顔ゆがめたる」と発言。これに対して藪も「内角は弱点ですから。それに清原さんなら、よける技術があるはず」と応戦した。